食洗機のスイッチを入れながら、郵便受けに入っていた電力会社のチラシを思い出す。「夜間の電気代がおトクになるプランがあります」。日中はほとんど家におらず、洗濯も食器洗いも夜にまとめてしまう暮らしなら、このプランに変えれば電気代は下がるのだろうか。それとも、何か見落としている条件があるのだろうか。

この記事の要点

  • 夜間が安くなる時間帯別プランは、その代わりに昼間の単価が割高になる仕組みです。東京電力エナジーパートナーの夜トク8では、夜間(23時〜翌7時)31.64円に対し昼間(7時〜23時)は42.60円と、10円以上の差があります(税込、2026年10月31日までの単価・2026年10月時点・東京電力エナジーパートナー公式)
  • 向くかどうかは、夜間の使用量の割合と月の使用量で決まります。夜トク8を従量電灯B(30A)と比べた計算(契約電力4kW)では、分かれ目は月300kWhで約91%、400kWhで約73%、500kWhで約62%、600kWhで約55%です。月200kWhでは夜間がすべてでも下回りません(2026年11月1日からの単価、燃料費調整額・再エネ賦課金を除く)。計算は分かれ目の節にあります
  • 時間帯の区切りや単価は電力会社・プランごとに異なるため、必ず自分の契約先の公式サイトで最新の条件を確認する必要があります

時間帯別プランとは? 仕組みをおさらい

時間帯別プランとは、1日の中で電力量料金(1kWhあたりの単価)が時間帯によって変わる料金プランのことです。資源エネルギー庁によると、電力自由化後の料金設定には、時間帯・平日休日・季節に応じて単価が変わる「ライフスタイルに合わせた料金プラン」が登場しており、時間帯別プランはその代表的な形のひとつです(2026年8月時点・資源エネルギー庁公式)。

多くの場合、電力需要が少ない夜間の単価を安くする代わりに、需要が集中する昼間の単価を高く設定する構成になっています。つまり「夜が安い」という宣伝文句の裏には、必ず「昼が高い」というトレードオフがあります。

夜と昼、単価はどれくらい違う? — 東京電力の実例で見る

具体的にどれくらいの差があるのか、東京電力エナジーパートナーが公開している時間帯別プラン「夜トクプラン」と、オール電化向けプラン「スマートライフ」の単価で見てみます(関東エリア向け、税込。2026年10月31日までの単価で、2026年10月時点・東京電力エナジーパートナー公式)。

プラン(2026年10月31日まで) 割安な時間帯 単価(1kWh) 割高な時間帯 単価(1kWh)
夜トク8 23時〜翌7時 31.64円 7時〜23時 42.60円
夜トク12 21時〜翌9時 33.33円 9時〜21時 44.16円
スマートライフ(オール電化向け) 1時〜6時 27.86円 6時〜翌1時 35.76円

(出典: 東京電力エナジーパートナー公式サイト「夜トクプラン」「スマートライフ」。夜トク8・夜トク12はいずれも基本料金255.69円/1kW、最低月額料金328.08円。2026年10月時点)

夜トクは2026年11月1日に改定され、基本料金は1kWあたり377.36円、夜トク8は昼間42.65円・夜間31.69円、夜トク12は昼間44.21円・夜間33.38円、最低月額料金は368.64円になります(税込、2026年10月時点・東京電力エナジーパートナー 2026年9月29日発表の別紙2)。電力量料金の単価は5銭上がるだけですが、基本料金の上がり幅が大きい点が、後述の損益の分かれ目に効きます。

※公式ページでは「スマートライフプラン」の新規加入の受付を停止していると案内されています。表の単価は参考値として掲載しています(2026年10月時点・東京電力エナジーパートナー公式)。

たとえば夜トク8で、1か月に昼間200kWh・夜間200kWhを使ったとします。電力量料金は昼間42.60円×200kWh=8,520円、夜間31.64円×200kWh=6,328円で、合計14,848円です。同じ400kWhをすべて昼間の単価で計算すると17,040円になるため、昼夜半々で使う家庭では単価差だけで2,192円の開きが生まれる計算になります(税込、2026年10月31日までの単価・2026年10月時点・東京電力エナジーパートナー公式)。この試算は、あくまで夜トク8という同一プラン内での昼間単価と夜間単価の差を示すためのものです。いまの契約と比べた損得は、次の節で計算します。

夜間が何%を超えると得になるか — 従量電灯Bとの分かれ目

「夜が安い」プランが得かどうかは、いまの契約より合計が下がるかどうかで決まります。ここでは、東京電力エナジーパートナー(関東)の従量電灯B(30A)から夜トク8に替えた場合を、2026年11月1日からの単価で比べます(税込、2026年10月時点・東京電力エナジーパートナー公式。従量電灯Bの単価は同社の約款、夜トクは2026年9月29日発表の別紙2)。

  • 従量電灯B(30A): 基本料金1,176.18円、電力量料金は120kWhまで29.85円、120kWh超300kWhまで36.45円、300kWh超40.54円
  • 夜トク8: 基本料金は1kWあたり377.36円、昼間(7時〜23時)42.65円、夜間(23時〜翌7時)31.69円、最低月額料金368.64円

夜トクの基本料金はアンペアではなく「契約電力(kW)」で決まります。30分ごとの使用電力量の月間最大値を2倍した値と、前11か月の最大需要電力のうち大きいほうが契約電力になります(スマート契約、2026年10月時点・東京電力エナジーパートナー公式)。たとえば30分で2kWhを使う時間帯が一度でもあれば4kW相当で、その後およそ1年は基本料金の目安が下がりません。ここでは仮に契約電力を4kWと6kWとして計算します。4kWなら基本料金は1,509.44円、6kWなら2,264.16円です(377.36円×kW)。

例(月400kWh・契約電力4kW): 従量電灯Bは1,176.18+29.85×120+36.45×180+40.54×100=15,373円です。夜トク8は夜間の割合によって次のとおり変わります。

夜間(23時〜翌7時)の割合 夜トク8の合計(4kW) 従量電灯B(30A)との差
0%(すべて昼間) 18,569円 3,196円高い
30% 17,254円 1,881円高い
60% 15,939円 566円高い
80% 15,062円 311円安い

分かれ目は、夜間の割合が約73%のところです。夜トク8は夜間の単価差が10.96円なので、基本料金の差と昼間の単価の高さを取り戻すには、使用量の大半を夜に寄せる必要があります。月の使用量ごとの分かれ目は次のとおりです(夜トク8の合計が従量電灯Bと並ぶ夜間割合。燃料費調整額・再エネ賦課金は含まない計算例で、実際の請求額ではありません)。

月の使用量 従量電灯B(30A) 分かれ目(契約電力4kW) 分かれ目(契約電力6kW)
200kWh 7,674円 夜間100%でも下回らない 夜間100%でも下回らない
300kWh 11,319円 約91% 100%でも下回らない
400kWh 15,373円 約73% 約90%
500kWh 19,427円 約62% 約76%
600kWh 23,481円 約55% 約67%

読み方は次のとおりです。

  • 月300kWh以下: 従量電灯Bの第1・第2段階の単価(29.85円・36.45円)が低く、夜トクの昼間単価42.65円は従量電灯Bの最上段(40.54円)より高いため、夜トクに替える理由は見つかりにくい水準です
  • 月500kWh以上で、夜間への集中が6割を超える(電気自動車の夜間充電、タイマーで夜にまとめて動かす家電など): 分かれ目を超える可能性があります。夜トク12(21時〜翌9時)は夜間単価が33.38円で、同じ条件での分かれ目は月400kWhで約88%、500kWhで約77%、600kWhで約70%と、夜トク8より高くなります
  • 契約電力が大きい世帯(6kW): 基本料金が重くなる分、同じ使用量でも分かれ目が上がります

注意点は3つあります。第一に、この比較は燃料費調整額と再エネ賦課金を含みません。従量電灯のような規制料金には燃料費調整額の上限がある一方、夜トクなどの自由料金には上限がないと公式ページに記載されています(2026年10月時点・東京電力エナジーパートナー公式)。第二に、紙の検針票(110円/月)や振込用紙(220円/月)には手数料がかかります。第三に、夜間の割合は検針票の合計だけでは分からないため、時間帯別の使用量を確認できるかどうかを契約先で確かめる必要があります。なお、31円/kWhは公取協が示す目安単価で、夜トク8の夜間単価(31.69円)は近い水準ですが、昼間単価(42.65円)は大きく上回ります。エコキュートなど夜間蓄熱式機器がある場合の分かれ目はエコキュートの電気代は月いくら?、2026年11月1日の料金改定の全体はオール電化の電気代が冬に増える原因で整理しています。

夜間の割合が分かれ目を超えそうな方は、まず検針票と公式の料金表で自分の数字を当てはめてください。月300kWh以下、日中の使用が多い世帯は、プラン変更より使い方の見直しのほうが合います。分かれ目の近くにいる方や、いまの電力会社の料金と他社の料金を並べて確かめたい方は、次の2社の公式サイトで料金を確認できます。

広告

複数社の料金を横断的に比較する候補として、電気チョイスの公式サイトで内容を確認できます。

【電気チョイス】

広告

切り替え先の候補として、エルピオでんきの公式サイトで料金プランを確認できます。

「単純明快な安さ」でお客さまに還元します!

オール電化向けプランとの違いは?

表を見ると分かるとおり、スマートライフはオール電化向けプランで、割安な時間帯が1時〜6時とさらに短く区切られています。対象となるのは、エコキュートなど夜間に稼働させる蓄熱式機器(総容量1kVA以上)を使用し、キッチンや空調も電気でまかなっている家庭です(2026年10月時点・東京電力エナジーパートナー公式)。なお、公式ページでは「スマートライフプラン」の新規加入の受付を停止していると案内されており、同じ単価で掲載されている他の区分の受付状況は本記事では確認していません。ここで紹介した単価は参考値です(2026年10月時点・東京電力エナジーパートナー公式)。

つまり、「夜間割安」という仕組み自体は共通していても、対象が異なります。ガスコンロや石油給湯器が残っている一般家庭は、夜トクプランのような通常の時間帯別プランが選択肢になり、給湯や暖房まで電気でまかなうオール電化住宅は、オール電化向けプランが選択肢になるという整理です。

時間帯別プランが向く人・向かない人

夜間の単価が安くなる仕組みから、向き不向きは次のように分かれます。

向く可能性があるケース

  • 夜勤やシフト勤務などで、在宅時間帯が夜に偏っている
  • 洗濯乾燥機や食洗機を、夜間にタイマーでまとめて使っている
  • エコキュートなど夜間に稼働する給湯設備がある
  • 電気自動車(EV)の充電を夜間に行っている

向かない可能性があるケース

  • 在宅勤務や、日中家にいる家族(乳幼児・高齢者など)がいて、昼間のエアコン使用量が多い
  • 家電の使用時間帯を、生活サイクル上ずらせない
  • そもそもの電気使用量が少なく、単価差による影響が小さい

洗濯や食洗機のタイマーを夜11時以降にセットしてから休めば、翌朝には割安な時間帯の単価で電気代が積み上がっている——というのが、このプランの仕組みが目指す使い方です。ただし、使用時間帯を変えられない家庭では、この仕組みのメリットを活かしきれません。特に冷房・暖房でエアコンを日中に多く使う季節は、昼間の単価が割高なタイプの時間帯別プランとの相性を見極める必要があります。エアコンの1時間あたりの電気代の計算式はエアコンの電気代は1時間いくら? — 消費電力×時間×31円の計算式で確かめるで整理しています。就寝中ずっと使う電気毛布のような暖房も、夜間の割安な時間帯と使用時間が重なりやすい家電です。一晩(8時間)あたりの電気代の実額は電気毛布の電気代は一晩いくら? — 敷き/掛け×弱・中・強の実数表で確かめるで計算しています。

契約前に確認すべきこと

ここまで見てきた単価はあくまで東京電力エナジーパートナーの一例です。時間帯の区切り(何時から何時までが割安か)も、単価そのものも、電力会社やプランによって異なります。他社の数字をそのまま自分の契約に当てはめることはできないため、契約を検討する際は、必ず自分が契約している(またはこれから契約する)電力会社の公式サイトの料金プランページで、最新の時間帯区分と単価を確認してください。

また、基本料金の体系や最低月額料金の有無も会社によって異なります。単価だけでなく、これらの固定費部分も含めて比較することが必要です。基本料金は契約アンペアなど契約容量に応じて決まる部分で、その選び方はブレーカーが落ちた夜に考える、契約アンペアの選び方 — 基本料金を決める「A」の数字の意味と変更手順 で解説しています。電力会社の切り替えを検討する場合の手順や注意点は、電力会社の切り替え方法とデメリット — 賃貸でもできる? で整理しています。電気代全体の見直しの優先順位は電気代の通知を見て「これって普通?」と気になったら — 一人暮らしの電気代、平均との比べ方と見直しの順番 でも解説しています。

よくある疑問

時間帯別プランに変えれば電気代は必ず下がりますか?

必ず下がるわけではありません。夜間の単価が下がる代わりに昼間の単価は上がるため、日中の使用量が多い世帯では総額が増えることもあります。東京電力エナジーパートナーの夜トク8では、夜間(23時〜翌7時)31.64円に対し昼間(7時〜23時)は42.60円で、昼夜の単価差は10円以上あります(税込、2026年10月31日までの単価。11月1日からは31.69円・42.65円、2026年10月時点・東京電力エナジーパートナー公式)。月400kWh・契約電力4kWの仮定では、夜間の使用割合が約73%を超えるまで、従量電灯B(30A)より高くなる計算です。

オール電化向けプランと時間帯別プランはどう違いますか?

仕組みは同じ「時間帯によって単価が変わる」プランですが、対象が異なります。オール電化向けプランは、エコキュートなど夜間に稼働させる蓄熱式機器(総容量1kVA以上)を使用する家庭が対象です。東京電力エナジーパートナーのスマートライフでは、夜間の割安時間帯が1時〜6時とさらに短く区切られています。なお新規加入の受付を停止しているのは「スマートライフプラン」です(2026年10月時点・東京電力エナジーパートナー公式)。ガスコンロなどが残っている家庭は、通常の時間帯別プランが対象になります。

昼間もある程度家にいる場合は向きませんか?

向かない可能性があります。昼間の単価は割高に設定されているため、日中の使用量が多いほど割高な単価の影響を強く受けます。在宅時間帯が昼夜半々程度の場合は、時間帯を問わず単価が一定の標準的なプランと比較したうえで判断することをおすすめします。

従量電灯Bから夜トクに替えると、夜間が何%を超えれば得になりますか?

月の使用量と契約電力で変わります。東京電力エナジーパートナーの夜トク8(2026年11月1日からの単価)と従量電灯B(30A、同日からの単価)を、燃料費調整額と再エネ賦課金を除いて比べた計算では、契約電力4kWの場合、月300kWhで約91%、400kWhで約73%、500kWhで約62%、600kWhで約55%が分かれ目です。月200kWhでは夜間がすべてでも従量電灯Bを下回りません。契約電力は使用実績で決まるため、実際の損得は検針票と公式の料金表で確認してください(2026年10月時点・東京電力エナジーパートナー公式)。

時間帯の区分や単価はどこで確認できますか?

契約している、またはこれから契約する電力会社の公式サイトの料金プランページで確認できます。時間帯の区切りや単価は電力会社・プランごとに異なるため、他社の数字をそのまま自分の契約に当てはめることはできません。

まとめ

夜間が安くなる時間帯別プランは、その裏で昼間の単価が上がるトレードオフを伴う仕組みです。夜勤やシフト勤務で夜型の生活をしている家庭、夜間に家電をまとめて使う家庭には向きやすい一方、日中在宅が多い家庭では総額が増えることもあります。判断の軸は「月の使用量と、そのうち夜間に集中している割合」です。夜トク8を従量電灯B(30A)と比べた計算(契約電力4kW、2026年11月1日からの単価)では、月400kWhで夜間約73%、500kWhで約62%が分かれ目でした。計算と比較の候補は分かれ目の節にまとめています。チラシや広告の数字を鵜呑みにせず、まずは自分の契約先の公式サイトで時間帯区分と単価を確認し、現在の使用パターンと照らし合わせてみることをおすすめします。