真夏の午後、リモコンの設定温度を1℃下げようか迷う。真冬の朝は逆に、あと少し設定を上げたら電気代はどのくらい変わるのか。エアコンの電気代は「1時間あたりいくらか」が意外とわかりにくい家電の代表格です。計算式自体はシンプルなのに、当てはめる数字をどこから持ってくるかで答えが変わってしまいます。

この記事の要点

  • 電気代の目安単価は全国家庭電気製品公正取引協議会が定める31円/kWh(税込・令和4年7月22日改定)。1時間あたりの電気代は「消費電力(kW)×使用時間×31円」で計算できます(2026年8月時点・同協議会公式)
  • カタログの「2.2kW」は部屋を冷やす力(冷房能力)を表す数字で、実際に消費する電力(W)とは別の指標です。6畳向けモデルの公式仕様例では、冷房の消費電力635W(1時間約20円)、暖房の消費電力470W(1時間約15円)でした(2026年8月時点・メーカー公式仕様)
  • 暖房の方が電気代が高くなりやすいのは、外気温と設定温度の差が冬の方が大きくなりやすいためです。同モデルの期間消費電力量は冷房225kWhに対し暖房492kWhでした(同社公式)

1時間あたりの電気代 — 消費電力(kW)×使用時間×31円/kWh

エアコンに限らず、家電の電気代を計算する目安単価として広く使われているのが、全国家庭電気製品公正取引協議会が定める1kWhあたり31円(税込)です。この単価は令和4年7月22日に改定されたもので、電力・ガス取引監視等委員会が公表するデータをもとに算出されています(2026年8月時点・同協議会公式)。この単価を使うと、1時間あたりの電気代は次の式で求められます。

消費電力(kW) × 使用時間(h) × 31円/kWh

ここで注意したいのが、カタログに大きく書かれている「2.2kW」「2.8kW」という数字です。これは部屋を冷やす・温める力(冷房能力・暖房能力)を表す指標であり、実際にコンセントから消費する電力(消費電力・W)とは別の数字です。計算式に使うのは消費電力の方になります。

メーカー公式仕様を例に、冷房能力2.2kW(6畳向け)と2.8kW(10畳向け)のモデルで、実際の消費電力と1時間あたりの電気代を比べてみます(特定製品の推奨ではなく、公式仕様にもとづく計算例です)。

項目 6畳向け・冷房能力2.2kWの例 10畳向け・冷房能力2.8kWの例
冷房消費電力(定格) 635W 770W
冷房1時間あたり 約20円 約24円
暖房消費電力(定格) 470W 870W
暖房1時間あたり 約15円 約27円

(消費電力×31円/kWhで算出。出典: パナソニック公式 CS-224DFL・CS-284DFL 仕様ページ。2026年8月時点)

実際の消費電力には幅があります。上記6畳向けモデルの場合、冷房消費電力は135〜720Wの範囲で変動すると公式仕様に記載されており、設定温度に到達するまでの運転開始直後は上振れし、室温が安定すると下がります。「1時間いくら」は、運転状況によって変わる目安と考えるのが実態に近いといえます。

冷房と暖房で消費電力が違う理由 — 外気温との差

定格消費電力だけを見ると冷房の方が大きいモデルもありますが、シーズン合計の使用量を示す期間消費電力量で見ると、暖房の方が大きくなる例が多くあります。この理由は、エアコンの仕組みそのものにあります。

エアコンは、室内外の熱を移動させる「ヒートポンプ」という仕組みで冷房・暖房を行っています。一般社団法人日本冷凍空調工業会によると、エアコンの省エネ性を表す期間消費電力量は、冷房期間(5月23日〜10月4日)と暖房期間(11月8日〜4月16日)それぞれについて、東京の気象条件をモデルに、設定温度冷房27℃・暖房20℃、1日6:00〜24:00の18時間運転という条件で算出されています(2026年8月時点・同工業会公式)。

外気温と設定温度の差が大きいほど、その差を埋めるために多くの電力が必要になります。夏の冷房は外気温30℃前後と設定温度27〜28℃の差が数℃にとどまることが多いのに対し、冬の暖房期間は外気温が5℃前後まで下がる日もあり、設定温度20℃との差が15℃前後に広がります。先ほどのメーカー公式仕様でも、期間消費電力量は6畳向けモデルで冷房225kWhに対し暖房492kWh、10畳向けモデルで冷房265kWhに対し暖房648kWhと、いずれも暖房の方が大きくなっています(2026年8月時点・メーカー公式仕様)。

設定温度・フィルター掃除でどれだけ変わる? — 資源エネルギー庁の公表値

資源エネルギー庁の省エネポータルサイトでは、エアコン(冷房能力2.2kW)を対象にした具体的な省エネ効果を公表しています。年間の削減電力量に31円/kWhを掛けて、目安の節約額をまとめました(2026年8月時点・同庁公式にもとづく計算)。

行動 年間の削減電力量 目安の節約額
冷房の設定温度を27℃→28℃(1℃上げる) 30.24kWh 約937円
暖房の設定温度を21℃→20℃(1℃下げる) 53.08kWh 約1,645円
冷房を1日1時間短縮する 18.78kWh 約582円
暖房を1日1時間短縮する 40.73kWh 約1,263円
フィルターを月1〜2回清掃する 31.95kWh 約990円

外気温度31℃時の冷房、外気温度6℃時の暖房(いずれも使用時間9時間/日)を条件とした試算値です(2026年8月時点・資源エネルギー庁公式)。この金額を、世帯人数別の電気代平均と比べてみたい場合は家族が増えて電気代がぐっと上がった気がしたら — 世帯人数別の電気代平均と比べ方も参考にしてください。

「つけっぱなし」と「こまめに消す」、どちらが得か

短時間の外出のたびにエアコンを消すべきか、つけっぱなしにすべきか。条件によって答えが変わるため、断定はできません。

エアコンは運転開始直後、設定温度と室温の差を一気に縮めようとして消費電力が大きくなる性質があります。ダイキン工業の公式検証では、つけっぱなしの部屋と30分ごとに入り切りした部屋を比較したところ、9〜18時の時間帯は30分程度の外出ならつけっぱなしの方が電力使用量が少なく、外気温が下がる18〜23時の時間帯はこまめに消した方が電気代が安くなったと報告されています(2026年8月時点・同社公式)。パナソニック公式も、外気温や外出時間によって有利な方法が変わるとしています。「何分・何度なら得」という一律の基準はなく、外気温と外出時間の両方で判断が変わる、という点までが公式情報から言える範囲です。

外出時間帯別にどこまでが「つけっぱなし」有利かをもう少し詳しく知りたい場合は、ダイキン工業の公式検証を日中・夜間の時間帯別に整理したエアコンは「つけっぱなし」と「こまめに消す」、どちらが得? — ダイキン公式検証で外出時間別に確かめるで確認できます。

在宅時間帯によって単価が変わるプランを使っている場合は、消す・つけるの判断とあわせてプランの向き不向きも確認しておくと合理的です。時間帯別プランの仕組みは「夜間は電気代がおトク」のチラシを見かけたら — 時間帯別プランの仕組みと向き不向きで整理しています。

よくある疑問

エアコンの電気代は1時間あたりいくらですか?

計算式は「消費電力(kW)×使用時間×31円/kWh」です(全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価。2026年8月時点・同協議会公式)。例として6畳向け(冷房能力2.2kW)モデルのメーカー公式仕様では、冷房の消費電力635Wなら1時間約20円、暖房の消費電力470Wなら1時間約15円になります。ただし消費電力は運転状況によって最小135W前後から最大720〜1,280W程度まで変動するため、実際の1時間あたりの金額には幅があります(2026年8月時点・メーカー公式仕様にもとづく計算例)。

冷房より暖房の方が電気代が高くなるのはなぜですか?

エアコンはヒートポンプの仕組みで熱を移動させており、外気温と設定温度の差が大きいほど多くの電力を必要とします。冷房期間(5月23日〜10月4日)は外気温との差が数℃程度にとどまりやすいのに対し、暖房期間(11月8日〜4月16日)は真冬の外気温と設定温度の差が10℃を超えることもあります。メーカー公式仕様の期間消費電力量でも、6畳向けモデルで冷房225kWhに対し暖房492kWh、10畳向けモデルで冷房265kWhに対し暖房648kWhと、暖房の方が大きい実例が確認できます(2026年8月時点・日本冷凍空調工業会公式、メーカー公式仕様)。

エアコンは「つけっぱなし」と「こまめに消す」、どちらが電気代の節約になりますか?

条件によって答えが変わるため、一律に断定はできません。エアコンは運転開始直後に消費電力が大きくなる性質があり、ダイキン工業の検証では日中(9〜18時)の短時間の外出は「つけっぱなし」の方が電力使用量が少なく、時間帯や外気温によって結果が変わったと公式に報告されています。パナソニック公式も、外出時間や外気温によって有利な方法が変わるとしています。ご自宅の断熱性能や外出時間によっても変わるため、目安として参考にしてください(2026年8月時点・各社公式)。

まとめ

エアコンの電気代を1時間単位で知りたいときは、「消費電力(kW)×使用時間×31円/kWh」という計算式に、カタログの冷房能力ではなく消費電力(W)の数字を当てはめるのが正確です。冷房より暖房の電気代が高くなりやすいのは、外気温と設定温度の差が冬の方が広がりやすいという、ヒートポンプの仕組みに由来する理由からです。設定温度やフィルター掃除による節電効果は資源エネルギー庁の公表値で裏付けられている一方、「つけっぱなしか、こまめに消すか」は外気温と外出時間次第で答えが変わります。冬場はエアコン暖房と他の暖房器具の電気代を比べてみるのも一案で、こたつ・電気ストーブ・電気毛布との1時間あたりの比較はこたつの電気代は1時間いくら? — 弱/強のカタログ値と暖房4種の比較でわかる強み・弱みで整理しています。検針票に並ぶ電力量料金や燃料費調整額の内訳まで含めて見直したい場合は、検針票の「燃料費調整額」に目が留まったら — 電気代の内訳と再エネ賦課金の読み方もあわせてご覧ください。同じ31円/kWhの目安単価を使った年間の電気代の計算は、24時間稼働し続ける冷蔵庫の電気代は年間いくら? — 容量別・年式別の年間消費電力量から計算するでも整理しています。同じ「消費電力×時間×31円」の計算式は、調理を担うIHクッキングヒーターの電気代にも使えます。詳しくはIHの電気代は1回いくら? — 消費電力×時間×31円の計算式で確かめるで整理しています。