リフォームの見積もりを取ると、営業担当によって「床暖房は電気代が高い」と言われたり、「うちのはそんなにかからない」と言われたりする——そんな食い違いに戸惑ったことはないでしょうか。実は両方とも間違っていません。床暖房には仕組みの異なる3つの方式があり、同じ「床暖房」でも電気代の水準や試算の前提がまったく違うのです。
この記事の要点
- 床暖房は「①電気ヒーター式」「②電気ヒートポンプ温水式」「③ガス温水式」の3方式に分かれ、電気代の仕組みも試算の単価もそれぞれ違います(2026年9月時点・各社公式)
- 電気ヒーター式は、パナソニック公式(フリーほっと)でも1か月あたりの絶対額は公開されておらず、確認できたのはPTCヒーターによる従来品比の省エネ効果(3%・年間約1,300円、10畳プラン・8時間・年165日・31円/kWhの条件)のみでした
- ヒートポンプ式・ガス式は電力・ガス単価が異なるため単純比較はできませんが、ダイキン公式試算(20畳・単価27円/kWh)でヒートポンプ式年19,200円・ガス式年44,200円、東京ガス公式試算(エアコン併用)でガス式1日約184円という、条件付きの数字が確認できます
床暖房は3方式ある — まず全体像
床暖房と一口に言っても、床を暖める仕組みは大きく3つに分かれます。
- 電気ヒーター式: 床下の電熱線や面状発熱体(パナソニックの「フリーほっと」など)に直接通電して発熱させる方式
- 電気ヒートポンプ温水式: エアコンと同じヒートポンプの原理で大気の熱を利用して温水をつくり、床下の配管に循環させる方式(ダイキンの「ホッとエコフロア」、パナソニックのエコキュート利用タイプなど)
- ガス温水式: ガス給湯暖房機で温めた温水を床下の配管に循環させる方式(東京ガスの「ヌック」「はやわざ」、大阪ガスの「ヌック」など)
同じ「電気」でも①と②は仕組みがまったく違い、電気代の出方も異なります。次の章から、方式ごとに公式情報にもとづいて確認できた数字を見ていきます。
電気ヒーター式 — メーカー公式でも絶対額は公開されていない
電気ヒーター式は、床下の電熱線や面状発熱体に直接通電して発熱させる方式です。パナソニックの電気床暖房「フリーほっと」はPTCヒーター(温度が上がった部位だけヒーター自身が発熱を抑える仕組み)を採用しています。
この製品の公式ページを確認したところ、1時間あたり・1か月あたりといった消費電力(W)や電気代の絶対額を示す記載は見当たりませんでした。確認できたのは、従来型ヒーターとの比較による省エネ効果のみです。
電気代を約3%節約、年間約1,300円お得になります。 ※木造住宅・合板下地、10畳プラン、1日8時間、年間165日使用、新電力料金目安単価31円/kWh(税込)(2022年7月22日改訂)で計算。室温20℃・あたたかめ(床温約30℃)の場合。
(2026年9月時点・パナソニック公式)
この数値は「フリーほっとが従来型ヒーターよりどれだけ節約できるか」を示す比較値であり、フリーほっと自体が10畳・8時間・165日の使用で年間いくらかかるかという絶対額ではありません。当サイトで独自に消費電力を仮定して1時間・1か月の電気代を試算することもできますが、根拠のない数字になってしまうため、この記事では試算表を作らず、パナソニック公式が示す条件付きの数値のみを掲載しています。電気ヒーター式のW数を明記した仕様(取扱説明書・カタログの畳数別消費電力表など)が確認できた場合は、あらためて試算を追記します。
なお、床暖房もこたつや電気毛布と同じくサーモスタットで温度を保つ仕組みが一般的で、常に一定の電力を消費し続けるわけではありません(詳しくはこたつの電気代は1時間いくら?で解説しています)。
電気ヒートポンプ温水式 — エアコンと同じ原理で温水をつくる
ヒートポンプ式温水床暖房は、大気中の熱を集めて冷媒を暖め、その熱で温水をつくって床下の配管に循環させる仕組みです。ダイキン公式は「エアコンの暖房サイクルと同じ原理」と説明しています(2026年9月時点・同社公式)。
ダイキン工業のヒートポンプ式温水暖房システム総合カタログ(2017年5月発行)には、次の試算が掲載されています(電力単価27円/kWhは全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価、ガス単価は東京ガスの一般ガス供給約款・2015年12月時点のもの。試算条件: 所在地=東京都、運転月=11月〜4月の6カ月間、運転時間=6時〜9時・17時〜22時の8時間/日、住宅仕様=次世代省エネ基準、床暖房対象面積=20畳、機器仕様=ホッとエコフロア6.7kW〈1MU56RFV〉・ガス温水床暖房は24号タイプ)。
| 方式(ダイキン公式試算・20畳・床暖房だけの場合) | 年間ランニングコスト |
|---|---|
| ヒートポンプ式温水床暖房 | 19,200円/年 |
| ガス式温水床暖房 | 44,200円/年 |
(ダイキン公式カタログの試算をそのまま掲載。電力単価27円/kWhは当サイトの標準単価31円/kWhとは異なるため、再計算はせず引用にとどめています。2026年9月時点確認)
参考として、ヒートポンプ式温水床暖房の19,200円/年を当サイトの標準単価31円/kWhで単純換算すると、年約22,044円になります。運転期間の11月〜4月(6カ月)で均すと月平均約3,674円ですが、これは年間試算を単純に月数で割った参考値であり、実際の各月の電気代ではありません。ガス式温水床暖房の44,200円/年は電気・ガスの内訳が示されていないため、同様の単価換算は行っていません。
パナソニック公式は、エコキュートを使った温水式床暖房について、昼間より安い夜間電力を使って湯を沸かす仕組みだと説明しています(2026年9月時点・同社公式)。夜間の電力量料金が低い契約であれば費用を抑えられる場合がありますが、実際の料金差や、必要に応じた昼間の追加運転がどれだけ発生するかは契約内容や使用状況によって変わります。時間帯別プランの仕組みそのものは「夜間は電気代がおトク」のチラシを見かけたらで整理しています。
ガス温水式 — 「電気式との違い」で見る
ガス温水床暖房は、室内で燃焼させるものがなく、ガス給湯暖房機でつくった温水を床下の配管に循環させます。次の表は東京ガス・大阪ガスそれぞれの公式試算です。東京ガスの試算は床暖房とエアコンを併用した場合の合計費用と原資料に明記されていますが、大阪ガスの試算は対象費用の内訳(床暖房だけか、エアコン等との合計か)が原資料に明記されていません。
| 出典・条件 | 対象費用 | 適用単価 | ランニングコスト |
|---|---|---|---|
| 東京ガス公式・立ち上がり時(木造14畳・敷設率53%・外気温7℃・床暖房+エアコン併用8時間運転) | 床暖房+エアコンの合計(原資料に明記) | ガス: 家庭用選択約款「暖らんぷらん」冬期料金B表 / 電気: 東京電力エナジーパートナー従量電灯B第二段階料金(2023年10月時点) | 1時間あたり約61円 |
| 東京ガス公式・定常時(同上) | 同上 | 同上 | 1時間あたり約18円 |
| 東京ガス公式・立ち上がりから8時間運転(同上) | 同上 | 同上 | 1日あたり約184円 |
| 大阪ガス公式(戸建・Q値1.9W/㎡・K相当・外気温5℃・床暖房セーブモード+エアコン18℃設定・洋室14畳) | 内訳の記載なし(床暖房のみかエアコン等との合計かは原資料に明記なし) | ガス: 「あっためトク料金エコジョーズプラン」(オプション割引9%適用)冬期使用機器(床暖房等)101.55円/m³(税込・冬期H〈100m³をこえる〉単価) / 電気: 関西電力従量電灯A第3段32.77円/kWh(税込) | 1時間あたり約17円 |
(各社公式の試算例。東京ガスの試算には原料費調整額・燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金は含まれておらず、小数点第一位を切り上げて算出されています(東京ガス公式の注記)。大阪ガスの101.55円/m³は床暖房を含む「冬期使用機器」向けの単価で、同ページに記載のある119.63円/m³は浴室暖房乾燥機の乾燥機能など「年間使用機器」向けの別区分の単価のため、床暖房の単価としては用いていません(浴室暖房乾燥機の電気ヒーター式の電気代は浴室暖房乾燥機の電気代は1回いくら? — 予備暖房15分・衣類乾燥3時間を公式仕様で試算で計算しています)。大阪ガスの電気単価32.77円/kWhは同社試算に使われている値で、当サイトの標準単価31円/kWhとは異なります。2026年9月時点確認)
東京ガス公式試算の1日約184円は、1か月(30日)に均すと約5,520円という計算になります。ただし前述のとおりエアコン併用込みの金額で、床暖房だけの内訳は示されていません。東京ガス公式は、運転スイッチの「入/切」を繰り返すとかえってムダになる場合があるとも説明しています。これはガス温水床暖房についての説明で、電気ヒーター式やヒートポンプ式について、当サイトが確認できた同様の公式案内はありませんでした。
東京ガス公式の「電気式との比較」ページによると、電気式床暖房を導入すると電気の契約容量を20A〜30A増やす必要が生じ、床暖房を使わない季節も基本料金が上がる場合があるとされています。一方、ガス温水式は契約電力をそのままにでき、複数の部屋に設置しても熱源機は1台で済むとしています(2026年9月時点・東京ガス公式)。電気とガスを両方使う世帯では、契約全体を見直す余地がないか電気とガスをまとめるデメリット — セット割より単体で選ぶほうが安いケースも参考にしてください。
参考 — エアコン暖房の消費電力と電気代
床暖房と並べて語られることが多いエアコン暖房について、エアコンの電気代は1時間いくら?で使ったメーカー公式仕様を、31円/kWh・定格の暖房消費電力(W)×時間で計算し直しました(1か月は8時間×30日=240時間として計算)。
| 項目 | 6畳向けモデルの例(CS-224DFL) | 10畳向けモデルの例(CS-284DFL) |
|---|---|---|
| 暖房消費電力(定格) | 470W | 870W |
| 暖房消費電力の変動幅(公式仕様) | 125〜1,280W | 125〜1,390W |
| 1時間の電気代(定格値で計算) | 約14.6円 | 約27.0円 |
| 1か月(8時間×30日)の電気代(定格値で計算) | 約3,497円 | 約6,473円 |
(メーカー公式仕様の定格消費電力に31円/kWhを掛けた当サイトの計算例。2026年9月時点)
この表は、各機種の暖房消費電力が一定で続いたと仮定した場合の単純な費用比較であり、部屋の温まり方や体感の暖かさ、暖房効果までを表すものではありません。エアコンは設定温度に到達するまでの運転開始直後に消費電力が上振れし、室温が安定すると下がる性質があるため、実際の1時間あたりの金額は表の数字より変動します(公式仕様では6畳向けモデルで125〜1,280W、10畳向けモデルで125〜1,390Wの範囲。2026年9月時点・メーカー公式仕様)。
前章までのヒートポンプ式(20畳・31円/kWh換算で暖房期6か月平均約3,674円/月)やガス式(東京ガス公式試算で1日約184円・30日換算で約5,520円)と単純に金額だけを比べたくなりますが、対象面積・住宅条件・運転条件が異なり、同じ室温・暖房効果を得るための比較ではないため、この記事の中では横並びの優劣比較はしていません。桁のイメージをつかむ参考情報として見てください。床暖房の工事や導入が難しい場合、可搬式のオイルヒーターも選択肢になります。電気代の実額はオイルヒーターの電気代は1か月いくら?で計算しています。
新築・リフォームでの選び方 — 両論
初期費用を含めた損得は個々の住宅条件で変わるため、ここでは各社公式が示す範囲にとどめます。パナソニック公式は、温水式は「設置費用は電気式と比べると割高」だが「安いランニングコストで暖房できる」とし、在宅時間が長い家庭・複数部屋・LDKでの使用に向くとしています。電気式は「設置費用は安く抑えられる」一方「ランニングコストは温水式と比べるとやや割高」とし、日中外出が多い家庭・部分的な使用に向くとしています(2026年9月時点・同社公式)。
東京ガス公式も、電気式は電気容量の増強と基本料金アップが必要になりやすい一方、ガス温水式は契約電力そのままで複数部屋に対応できるとしています。どちらが向くかは、暖める部屋数・在宅時間・既存の電気契約によって変わるため、一方だけを勧める情報は割り引いて見る必要があります。オール電化住宅の場合は、床暖房単体だけでなく世帯全体の電気代水準も踏まえて検討したい場合、オール電化の電気代平均は高い?もあわせて確認してください。
よくある疑問
床暖房の電気代は1か月あたりいくらですか?
方式によって試算条件も単価も異なるため、単純な横並び比較はできません。電気ヒーター式は、パナソニック公式(フリーほっと)でも1か月あたりの絶対額は公開されておらず、確認できたのはPTCヒーターにより従来型ヒーターより電気代を約3%(年間約1,300円)節約できるという条件付きの数値のみでした(10畳プラン・1日8時間・年間165日使用・31円/kWhの条件。2026年9月時点)。ヒートポンプ式温水床暖房はダイキン公式試算(20畳・電力単価27円/kWh)で年間19,200円、31円/kWhで単純換算すると年約22,044円(暖房期6か月平均で約3,674円/月、実際の各月の金額ではありません)。ガス温水式は東京ガス公式試算(ガス:「暖らんぷらん」冬期料金B表・電気:従量電灯B第二段階、2023年10月時点。床暖房+エアコン併用・8時間運転の合計)で1日約184円、30日換算で約5,520円でした。
床暖房は電気式とガス式、どちらがお得ですか?
ランニングコストだけで見ると、ヒートポンプ式やガス式のような温水式の方が電気ヒーター式より安く抑えられる傾向があります。ダイキン公式試算では、ヒートポンプ式温水床暖房(20畳)が年間19,200円、ガス温水床暖房が年間44,200円でした(電力単価27円/kWh・2026年9月時点確認)。一方でパナソニック公式は、温水式は設置費用が電気式より割高になりやすいとも説明しています。初期費用まで含めると一概にどちらが得とは言えず、日中不在が多く部分暖房で足りる家庭は電気式、在宅時間が長く複数部屋を暖めたい家庭は温水式が向くとされています。
床暖房はつけっぱなしにした方が電気代は安くなりますか?
東京ガス公式は、ガス温水床暖房について運転スイッチの「入/切」を繰り返すとかえってムダになる場合があるとし、立ち上がり時(1時間あたり約61円、ガス:「暖らんぷらん」冬期料金B表・電気:従量電灯B第二段階〈2023年10月時点〉・エアコン併用の合計)は定常運転時(約18円、同条件)より多くのエネルギーを使うと説明しています(2026年9月時点・東京ガス公式)。この説明はガス温水式についてのものです。電気ヒーター式やヒートポンプ式について、当サイトが確認できた公式のつけっぱなし運転案内はありませんでした。
床暖房の電気代のあとに — 電力会社を比べてみるなら
床暖房の使い方は今のままでも、電力会社やプランを比べてみる方法はあります。現在の契約に不満がなければ、この節は読み飛ばして問題ありません。見直しを考える場合の比較の候補です。
まとめ
床暖房の電気代は、方式によって公開されている情報の中身がまったく異なります。電気ヒーター式はパナソニック公式でも絶対額が公開されておらず、確認できたのは条件付きの省エネ率だけでした。ヒートポンプ式・ガス式はダイキン・東京ガス・大阪ガスの公式試算があるものの、単価も併用条件も会社ごとに異なるため、そのままでは横並びに比較できません。「床暖房は電気代が高い」「そんなにかからない」という食い違った話が出回るのは、どの方式・どの条件の話をしているのかが省略されやすいためだと考えられます。導入や比較の際は、示されている数字がどの方式・どの単価・どの併用条件にもとづくものかを確認することが欠かせません。
ほかの家電の電気代も比べたい場合は、家電の電気代 早見表でまとめて確認できます。




