「基本料金0円」という言葉を見て、電気代が安くなりそうだと感じる人は多いかもしれません。ただ、基本料金がなくなる代わりに、1kWhあたりの電力量料金は高めに設定されていることがあります。使う量が少ない世帯のほうが得なのか、多い世帯のほうが得なのか。この記事では、東京電力エリアの従量電灯Bと、公式サイトで基本料金0円と確認できた固定単価のプランを、月の使用量別に計算して比べます。

この記事の要点

  • 0円でんき(東京エリア)は基本料金0円、従量料金34.80円/kWh(税込)で、燃料費調整額と再エネ賦課金は別途かかります。2026年10月11日に公式ページで確認しました
  • 東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bは、2026年11月1日に30A契約の基本料金が935円25銭から1,176円18銭になります。同日から電力量料金も3段階とも5銭上がります
  • 燃料費調整額と再エネ賦課金を除いた試算では、30A契約の場合、月100〜400kWhで0円でんきの方が低くなりました。10A契約では月80〜242kWhで従量電灯Bの方が低くなります
  • 楽天でんき プランS・ONEでんき・ストエネ電気は、基本料金0円でも市場価格に連動する仕組みを持つため、固定単価の試算には混ぜていません

先に決める — 何を比べ、何を比べないか

この記事の試算は、次の前提に統一しています。前提が違う数字を並べないためです。

  • エリアと契約: 東京電力エリア。従量電灯B相当のプラン。契約容量は30Aを中心に、10A・15A・20A・40A・50A・60Aも計算しました
  • 金額: すべて税込
  • 含めるもの: 基本料金(あれば)と電力量料金
  • 含めないもの: 燃料費調整額と再エネ賦課金。燃料費調整単価は会社ごとに毎月異なります。再エネ賦課金は国が年度ごとに定める単価(2026年度は1kWhあたり4.18円)で、どの会社でも同じ単価が使用量にかかるため、比較の差には影響しません(2026年10月時点・経済産業省公式)
  • 市場連動型: 単価が毎月変動するため、固定単価の試算とは別に扱います

比較の目安となる単価として、公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会(公取協)は電気料金の目安単価を31円/kWh(税込)と定めています(2026年10月時点・同協議会公式)。ここでの試算は、この目安単価ではなく、各社が公式に公表している単価を使っています。

基本料金0円を公式に掲げているプラン(2026年10月11日確認)

公式サイトで基本料金0円と書かれていることを確認できたプランを整理します。他社のまとめ記事ではなく、各社の公式ページを確認しました。

プラン 基本料金 単価の性質 確認内容
0円でんき(株式会社オカモト) 0円 固定(東京エリア 34.80円/kWh) 公式ページに記載。燃料費調整額・再エネ賦課金は別途。オール電化・低圧電力(動力)は契約不可
楽天でんき プランS(楽天エナジー) 0円 固定の従量料金に市場価格調整額が加減算 公式ページに記載。東京電力エリアは36.85円/kWh、2026年11月1日から38.00円/kWh
ONEでんき スタンダードプラン 0円 市場価格に連動 公式ページに「市場価格に連動する料金体系」と記載
ストエネ電気 フリープラン 0円 市場価格に連動 公式ページに「電気の市場価格(JEPXエリアプライス)の変動を毎月の電気代に反映」と記載

この表のうち、固定単価で試算できるのは0円でんきです。 楽天でんき プランSは固定の従量料金を持ちますが、後述のとおり市場価格調整額が加わるため、別の節で扱います。ONEでんきとストエネ電気は、単価を確認しても毎月の市場価格で変わるため、試算に入れていません。

これ以外にも基本料金0円を掲げる電力会社はあります。この記事では、公式ページで東京エリアの単価まで確認できたものだけを載せました。Looopでんきは公式サイトで確認できた範囲では市場連動型で、基本料金の記載を確認していないため載せていません。

比べる相手 — 従量電灯Bの料金(2026年11月1日の前後)

東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bは、基本料金(契約アンペア別)と、使用量に応じて単価が上がる3段階の電力量料金で構成されます。2026年9月29日に、託送料金の見直しを2026年11月1日から反映するための料金が公表されました(2026年10月時点・同社公式)。

項目 2026年10月31日まで 2026年11月1日から
基本料金(10Aにつき) 311円75銭 392円06銭
基本料金(30A) 935円25銭 1,176円18銭
第1段階(120kWhまで) 29円80銭 29円85銭
第2段階(120kWh超〜300kWh) 36円40銭 36円45銭
第3段階(300kWh超) 40円49銭 40円54銭

従量電灯Bの料金の仕組みそのものは、従量電灯Bとは — 基本料金と3段階料金のしくみを計算例で読むで解説しています。

試算 — 30A契約で月100〜400kWh

計算式

  • 従量電灯B(30A): 基本料金+第1段階単価×min(使用量, 120)+第2段階単価×max(min(使用量, 300)−120, 0)+第3段階単価×max(使用量−300, 0)。使用量が120kWh以下や300kWh以下のときは、超えた分の項は0になります
  • 0円でんき: 34.80円×使用量
  • 円未満は切り捨て

具体例として、月200kWh・30A・2026年11月1日以降の従量電灯Bは、1,176.18円+29.85円×120+36.45円×80=1,176.18+3,582+2,916=7,674.18円で、円未満を切り捨てて7,674円です。同じ200kWhの0円でんきは、34.80円×200=6,960円です。

結果

月の使用量 従量電灯B(10月31日まで) 従量電灯B(11月1日から) 0円でんき 差(11月1日からの従量電灯B−0円でんき)
100kWh 3,915円 4,161円 3,480円 681円
200kWh 7,423円 7,674円 6,960円 714円
300kWh 11,063円 11,319円 10,440円 879円
400kWh 15,112円 15,373円 13,920円 1,453円

(東京エリア・30A・税込・燃料費調整額と再エネ賦課金を除く。0円でんきの単価は2026年10月11日の公式ページで確認した34.80円/kWhのまま、改定がないと仮定した計算例です)

この条件では、30A契約の場合、月100〜400kWhのどの使用量でも0円でんきの方が低くなります。しかも使用量が増えるほど差が広がります。従量電灯Bは、300kWhを超えた分の単価が40円54銭と、0円でんきの34.80円/kWhを上回るためです。0円でんき公式も、契約アンペア数が高く、電力使用量の多いお客さまほどお得と案内しています(2026年10月時点・同社公式)。

「使用量が少ない世帯ほど有利」という見方は、この条件では当てはまりません。ただし、次の契約アンペア別の結果を見ると、小さい契約では事情が変わります。

契約アンペア別の損益分岐

月1〜800kWhの範囲で、1kWhごとに従量電灯Bと0円でんきを比べ、従量電灯Bの方が低くなる使用量の範囲を探しました(2026年11月1日以降の従量電灯Bとの比較)。

契約アンペア 従量電灯Bの方が低くなる使用量の範囲 それ以外の範囲
10A 80〜242kWh 0円でんきの方が低い(79kWh以下、243kWh以上)
15A 119〜123kWh(124kWhは同額の4,315円) 125kWh以上は0円でんきの方が低い(118kWh以下も0円でんきの方が低い)
20A・30A・40A・50A・60A 該当なし 全範囲で0円でんきの方が低い

10Aの分岐は、第1段階の範囲で「392.06円+29.85円×使用量=34.80円×使用量」を解いた約79.2kWh(80kWh以上で従量電灯Bが低くなる)と、第2段階の範囲で「392.06円+3,582円+36.45円×(使用量−120)=34.80円×使用量」を解いた約242.4kWh(243kWhから0円でんきが低くなる)です。契約が小さく、基本料金が小さい世帯では、基本料金の差よりも単価の差が効く使用量の範囲があります。

2026年10月31日までの従量電灯Bで同じ計算をすると、10Aは63〜300kWh、15Aは94〜202kWhで従量電灯Bの方が低く(15Aの203kWhは両社とも7,064円で同額)、20A以上では全範囲で0円でんきの方が低くなります。11月1日の改定で基本料金が上がるため、従量電灯Bが有利な範囲は狭くなります。

燃料費調整額と再エネ賦課金 — 試算に入れなかったもの

実際の請求額は、次の式で決まります。

請求額=基本料金+電力量料金+燃料費調整単価×使用量+再エネ賦課金単価×使用量

  • 再エネ賦課金: 2026年度は1kWhあたり4.18円で、両社に同じ単価がかかります。200kWhなら836円で、差には影響しません(経済産業省公式)
  • 燃料費調整単価: 会社ごと、月ごとに異なります。たとえば、東京電力エナジーパートナーの2026年11月分は▲5.33円/kWh(同社2026年9月29日の発表)、0円でんきの2026年10月分(東京エリア)は▲5.80円/kWh(国の支援による値引き前。値引き後は▲9.30円/kWh)です。月が違う数字なので比較には使えませんが、会社ごとに単価が違うことは確認できます
  • 規制料金の上限: 従量電灯Bなどの規制料金プランには、燃料費調整の平均燃料価格に上限(基準燃料価格の1.5倍、129,200円)があります。0円でんきに同様の上限があるかどうかは、確認できていません(2026年10月時点・東京電力エナジーパートナー公式)

燃料費調整単価の差が、試算の結論をどこまで動かすかも確認します。30A・月200kWhの差714円を200kWhで割ると約3.57円/kWh、月300kWhの差879円を300kWhで割ると約2.93円/kWhです。0円でんきの燃料費調整単価が従量電灯Bの単価よりこの値を超えて高くなる月は、差が逆転する計算です。月100kWhでは6.81円/kWh、月400kWhでは約3.63円/kWhです。

楽天でんき プランS — 基本料金0円でも、市場価格調整額が加わる

楽天でんき プランSは、公式ページで基本料金0円と案内されています。東京電力エリアの従量料金は、2026年10月31日までが36.85円/kWh、2026年11月1日からが38.00円/kWh(託送料金の見直しによる改定)です(2026年10月11日確認・楽天エナジー公式)。ここまでを、市場価格調整額を含まない部分だけで計算すると、次のようになります。

月の使用量 従量電灯B(11月1日から・30A) 楽天でんき プランS(11月1日から38.00円) 差(楽天−従量電灯B)
100kWh 4,161円 3,800円 −361円
200kWh 7,674円 7,600円 −74円
300kWh 11,319円 11,400円 81円
400kWh 15,373円 15,200円 −173円

ただし、楽天でんきの公式ページは、月々の電気料金を「電力量料金に市場価格調整額と再生可能エネルギー発電促進賦課金を適用して計算」すると説明しています。約款では、平均市場価格(日本卸電力取引所のスポット市場のエリアプライスの平均)が1kWhあたり13円を超える場合、(平均市場価格−13円)×(1+消費税率)を市場価格調整単価として従量料金に加え、7円を下回る場合は(7円−平均市場価格)×(1+消費税率)を差し引くと定められています。7〜13円の間は0円です。

公式が公表している東京電力エリアの市場価格調整単価は、2026年1月分が0.00円/kWh、2026年10月分が8.36円/kWhです。2026年10月分のPDFには、国の電気・ガス料金支援で1kWhあたり3.5円が値引きされており、お客様の電気料金に適用されるのは値引き後の単価と注記されています。8.36円はこの注記つきで掲載された、値引き後の単価として読めます。市場価格調整額が上の表の「市場価格調整額を含まない部分」に加わる月があり、その月は表の順位が変わります。たとえば、月200kWhで調整単価が8.36円/kWhなら、200kWh×8.36円=1,672円が加わる計算です。ただしこれは、10月分の調整単価と11月1日からの従量料金を組み合わせた仮定の例で、実際の請求額ではありません。

このため、楽天でんき プランSは固定単価の試算とは別の扱いにしています。市場連動の仕組みと、冬に注意する理由は、市場連動型プランとは — JEPX連動の仕組みと冬の注意点で整理しています。

切り替える前に確認したいこと

  • 0円でんきの単価は、2026年10月11日時点の公式ページの数字です。 同社のお知らせ一覧(2026年9月15日付まで)には、2026年11月1日の託送料金見直しに関する案内を確認できませんでした。今後の改定の有無は、この記事の確認範囲では分かりません
  • オール電化は契約できません。 0円でんきの公式ページに「オール電化はご契約頂けません」「低圧電力(動力)はサービス対象外」と書かれています(2026年10月時点)
  • スマートメーターへの交換が必要です。 0円でんきの申込の流れに、現在アナログメーターの場合はスマートメーターに交換すると書かれています(2026年10月時点)
  • 試算は一つの断面です。 季節や世帯人数で月の使用量は変わります。検針票の過去12か月の使用量と契約アンペアを確認して、自分の場合に当てはめてみてください。検針票の読み方は検針票の「燃料費調整額」に目が留まったら — 電気代の内訳と再エネ賦課金の読み方、契約アンペアの見直しはブレーカーが落ちた夜に考える、契約アンペアの選び方 — 基本料金を決める「A」の数字の意味と変更手順で扱っています

向かない人・向く人

基本料金0円のプランが向くと考えられるのは、契約アンペア数が高めで、月の使用量が多い世帯です。この記事の試算では、20A以上の契約なら、燃料費調整額を除いた比較で全範囲に0円でんきが低くなりました。一方、契約アンペアが小さく、月の使用量が80〜240kWh程度の世帯は、従量電灯Bの方が低くなる範囲に入ります。単身世帯の見直しの順番は電気代の通知を見て「これって普通?」と気になったら — 一人暮らしの電気代、平均との比べ方と見直しの順番にまとめています。

いずれの場合も、燃料費調整額の差、規制料金の上限の有無、今後の単価の改定で結果は変わります。「必ず安くなる」と言える条件はありません。電気代の計算式の基本は電気代の計算方法 — 「W × 時間 ÷ 1000 × 単価」の式と、見落としやすい3つの前提でも確認できます。

よくある疑問

基本料金0円の電気プランは、使用量が少ない世帯ほど有利ですか?

この記事の試算(東京エリア・従量電灯B・燃料費調整額と再エネ賦課金を除く)では、そう単純ではありませんでした。基本料金0円で固定単価34.80円/kWhの「0円でんき」は、契約30Aなら月100〜400kWhのどの使用量でも、2026年11月1日の改定後の従量電灯Bより低くなりました。一方、契約10Aでは月80〜242kWhの範囲で従量電灯Bの方が低くなります。0円でんき公式も、契約アンペア数が高く、電力使用量の多いお客さまほどお得と案内しています(2026年10月時点)。

基本料金0円なら、必ず安くなりますか?

必ずとは言えません。契約アンペアが小さい世帯では、従量電灯Bの方が安い使用量の範囲があります。また、この試算には各社で異なる燃料費調整額を含めていません。30A契約・月200kWhの場合、0円でんきの燃料費調整単価が従量電灯Bより1kWhあたり約3.57円を超えて高くなると、差が逆転する計算です。実際の請求額は、燃料費調整額と再エネ賦課金を含めて確認する必要があります(2026年10月時点)。

燃料費調整額と再エネ賦課金は、基本料金0円のプランでもかかりますか?

0円でんきの公式ページには、燃料費調整額と再生可能エネルギー発電促進賦課金は別途かかると書かれています。再エネ賦課金は国が年度ごとに定める単価で、2026年度は1kWhあたり4.18円です。燃料費調整単価は会社ごとに毎月公表されます。楽天でんきのプランSは、約款上の料金が従量料金と再エネ賦課金で構成され、従量料金に市場価格調整額が加減算される仕組みです(2026年10月時点)。

市場連動型の基本料金0円プランも、同じ表で比べられますか?

比べられません。市場価格に連動するプランは、単価が毎月変わるため、固定単価の試算と同じ表に並べると誤解を招きます。ONEでんきとストエネ電気のフリープランは、公式ページで基本料金0円と市場価格に連動する料金体系の両方が書かれているため、この記事の試算には入れていません。仕組みは市場連動型プランの記事で説明しています(2026年10月時点)。

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まとめ

基本料金0円のプランが得かどうかは、契約アンペアと月の使用量で決まります。東京エリアの試算(燃料費調整額と再エネ賦課金を除く)では、固定単価34.80円/kWhの0円でんきは、30A契約なら月100〜400kWhで、2026年11月1日の改定後の従量電灯Bより低くなりました。ただし契約10Aでは、月80〜242kWhで従量電灯Bの方が低くなります。燃料費調整単価が1kWhあたり3円前後ずれると結論が入れ替わる点と、市場価格に連動するプランは別物である点に注意してください。

まず検針票で、契約アンペアと過去の使用量を確認することから始めてみてください。

オール電化の世帯が冬に電気代が上がる理由は、オール電化の電気代が冬に上がる理由 — 設備ごとに分けて読むで整理しています。