電気料金の明細や電力会社のお知らせに「託送料金の見直し」と書かれていても、託送料金とは何に使われるお金なのか、自分が直接払っているのか、が分かりにくいと感じる人は少なくありません。この記事では、託送料金の仕組みと、2026年11月1日の見直しの経緯を、電力・ガス取引監視等委員会と各社の公式発表で確認します。

この記事の要点

  • 託送料金とは、送配電ネットワークを整備・維持し、電気を安定して送り届けるために、電気料金を通じて回収される料金です。電気料金の約30%を占めると説明されています(電力・ガス取引監視等委員会。2026年10月時点)
  • 託送料金は、一般送配電事業者が国の承認を受けた「収入の見通し」に基づいて決まります。2026年は、物価・労務費・金利の上昇を反映するための変更が7月10日に申請され、9月4日に承認されました(東京電力パワーグリッド公式)
  • 新しい託送料金は2026年11月1日から実施される予定で、9月11日に託送供給等約款の変更が届出されました(東京電力パワーグリッド・沖縄電力公式)
  • 託送料金の平均単価の上げ幅に使用量を掛けても、自分の増額は出ません。東京電力エナジーパートナーの従量電灯B・30Aでは、約214kWhを境に見積もりと実際の増額の大小が逆転します(公式の数字から計算。契約アンペアで境は変わります)
  • 託送料金の平均単価は、低圧で東京電力パワーグリッドが8円58銭から9円65銭、中国電力ネットワークが9円34銭から10円46銭、沖縄電力が11円53銭から13円52銭へと、エリアごとに異なる変わり方をします(いずれも税抜。各社公式)

託送料金とは — 送配電ネットワークの利用料金

発電所でつくられた電気は、鉄塔や送電線、電柱や配電線、変電所を通って家庭に届きます。電力・ガス取引監視等委員会は、この送配電ネットワークを整備・維持し、電気を安定して送り届けるために、電気料金を通じて回収される料金が「託送料金」だと説明しています。具体的には、送電線や配電線、変電所などの建設・運用・保守、需給調整、電力使用量の把握などに充てられ、電気料金の約30%を占めるとされています(2026年10月時点・同委員会公式)。

託送料金は、日本全国10エリアの送配電事業者(一般送配電事業者)を通して電気を届けるために必要な費用に充てられています。

誰が払っている? — 利用者の電気料金に含まれている

託送料金は、電気を売る会社(小売電気事業者)や発電事業者が、一般送配電事業者の設備を使うときに支払う料金です。沖縄電力は、託送料金を「すべての小売電気事業者等(弊社小売部門含む)が、送配電設備を利用する際に一般送配電事業者に支払う料金」と説明しています。東京電力エナジーパートナーも、同社の電気料金には一般送配電事業者の送配電設備を利用する際の託送料金が含まれていると案内しています(2026年10月時点・各社公式)。

つまり、利用者が託送料金だけを別に払うのではなく、契約している電力会社への電気料金の中に含まれています。電気料金の内訳の見方は検針票の「燃料費調整額」に目が留まったらで整理しています。

料金はどう決まる? — レベニューキャップ制度

電力・ガス取引監視等委員会によると、託送料金には2023年4月から「レベニューキャップ制度」が導入されています。一般送配電事業者が5年間の事業計画を作り、計画の実行に必要な費用(レベニューキャップ)を国が審査し、達成状況も国が評価する仕組みです。現在の規制期間は2023年度から2027年度の5年間です(2026年10月時点・同委員会、東京電力パワーグリッド公式)。

同委員会のページには「2026年度の変更点」として、物価等の上昇及び事業報酬の取扱いに関する変更があることが示されています。

2026年11月の見直しの経緯

東京電力パワーグリッドの発表によると、第1規制期間の期初には想定できなかった物価・労務費単価の高騰や金利の上昇で事業環境が変化したとして、「託送供給等に係る収入の見通し」の変更承認を申請しています。経緯は次のとおりです。

日付 出来事 出典
2026年7月10日 東京電力パワーグリッド、沖縄電力が、収入の見通しの変更承認を申請 各社公式
2026年9月4日 経済産業大臣が承認(東京電力パワーグリッド、沖縄電力とも発表) 各社公式
2026年9月11日 承認内容に基づき、託送供給等約款の変更を届出 各社公式
2026年11月1日 新しい託送料金を実施予定 各社公式

東京電力パワーグリッドの収入の見通し(5年合計)は、申請時に7兆6,062億円、現行より2,516億円の増額でした。9月11日の発表では、この承認値を前提に、実績収入と収入上限の乖離に関する調整として232億円を差し引いた7兆5,830億円(現行比+2,284億円)を基に託送料金単価を算定したと説明しています。沖縄電力は、申請時点の収入の見通しを、2023年度から2027年度の5年間で3,463億円から157億円増の3,621億円と発表しています(2026年10月時点・各社公式)。

なお、全社が同じ手続きではありません。中国電力は、同社の9月28日の資料の中で、2026年7月10日に収入の見通しの変更承認を申請したのは、中国電力ネットワークと北陸送配電を除く各一般送配電事業者だったと説明しています。中国電力ネットワークは、人口減少や省エネの進展による需要想定の下振れを理由に、2026年8月24日に託送供給等約款の変更を届出しています(2026年10月時点・中国電力公式)。

低圧の託送料金の平均単価 — エリアごとの変わり方

各社の発表から、家庭が使う低圧の託送料金の平均単価(1kWhあたり・税抜)を並べます。発表の時期や算定の前提が異なるため、数字の大小をそのまま優劣の比較にはしないでください。

一般送配電事業者 見直し前 見直し後 差
東京電力パワーグリッド 8円58銭 9円65銭 +1円07銭
中国電力ネットワーク 9円34銭 10円46銭 +1円12銭
沖縄電力 11円53銭 13円52銭 +1円99銭

(2026年10月時点。東京電力パワーグリッドは2026年9月11日、沖縄電力は同日、中国電力ネットワークは2026年8月24日の報道資料を中国電力が引用した数字。ほかの一般送配電事業者については、この記事では公式の一次資料で数字を確認していません)

託送料金の見直しは、小売の電気料金にどう届く?

一般送配電事業者が託送料金を変えると、小売電気事業者はその変動を自社の電気料金に反映するかどうかを判断します。2026年9月に発表した各社は、2026年11月1日から託送料金の変動分を電気料金に反映するとしています。

東京電力エナジーパートナーの例では、従量電灯B・30A・月260kWhの平均モデルで、現行9,307円が見直し後9,561円となり、254円増える内訳は次のとおりです(2026年11月分の燃料費調整単価▲5円33銭/kWh、再エネ賦課金4円18銭/kWh、消費税等相当額を含む。2026年10月時点・同社公式)。

  • 基本料金: 935円25銭 → 1,176円18銭(+240円93銭)
  • 電力量料金: 7,286円20銭 → 7,299円20銭(+13円)
  • 再エネ賦課金: 1,086円(変更なし)

この例では、増える金額の大部分が基本料金です。

電力量料金の数字には、燃料費調整額が入っています。 電力量料金の単価(最初の120kWhまで29円80銭→29円85銭、120kWh超300kWhまで36円40銭→36円45銭)で260kWhを計算すると、見直し前8,672円、見直し後8,685円です。ここに2026年11月分の燃料費調整額(▲5円33銭×260kWh=▲1,385円80銭)を足すと、上の7,286円20銭と7,299円20銭になります(単価表の単価から計算。2026年10月時点・同社公式)。燃料費調整単価と再エネ賦課金は新旧とも同じ値で置いているため、差額の254円は託送料金の見直し分だけです。実際の請求では、燃料費調整額は毎月変わるので、請求額そのものはこの表の金額とはずれます。基本料金・電力量料金の新旧の単価は、同じ東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bを従量電灯Bとはで計算例つきで解説しています。

一方で、反映の仕方や時期は会社・プランで異なります。東京電力エナジーパートナーは「エリアやプランにより見直し内容は異なります」と案内しており、四国電力は低圧自由料金プランを12月分料金から適用するとしています(2026年10月時点・各社公式)。

平均単価の上げ幅に使用量を掛けても、自分の増額は出ない

「託送料金の平均単価が1kWhあたり1円07銭上がるなら、使った分だけ増える」と考えて見積もると、外れます。東京電力エナジーパートナーの従量電灯B(規制料金)で、2つの数字を並べます。

  • 平均単価から見積もる方法: 東京電力パワーグリッドの低圧の平均単価の上げ幅は税抜で1円07銭です。税込(10%)にすると1円17銭7厘で、これに使用量を掛けます
  • 同社の単価表の実際の増額: 基本料金の増額(10Aあたり80円31銭)に、1kWhあたり5銭×使用量を足します。燃料費調整額と再エネ賦課金は含みません

2つが一致する使用量(分かれ目)は、基本料金の増額÷(1円17銭7厘-5銭)で出ます。

契約アンペア 基本料金の増額 2つが一致する使用量
10A 80円31銭 約71kWh
20A 160円62銭 約143kWh
30A 240円93銭 約214kWh
40A 321円24銭 約285kWh
60A 481円86銭 約428kWh

(税込。2026年10月時点。東京電力パワーグリッドの平均単価と、東京電力エナジーパートナーの2026年9月29日の単価表から計算)

30Aの場合の例です。

月の使用量 平均単価からの見積もり 単価表の実際の増額 差
100kWh 約118円 約246円 実際のほうが約128円大きい
214kWh 約252円 約252円 ほぼ一致
260kWh(公表モデル) 約306円 約254円 見積もりのほうが約52円大きい
500kWh 約589円 約266円 見積もりのほうが約323円大きい

読み方は次のとおりです。

  • 使用量が少ない世帯ほど、平均単価からの見積もりは実際の増額より小さくなります。この見直しでは、東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bの増額のほとんどが基本料金に回っているためです
  • 使用量が多い世帯では、見積もりは実際より大きく出ます。使用量が増えても、実際の増額は1kWhあたり5銭しか増えません
  • 平均単価は低圧全体の平均で、従量電灯B以外も含みます。2つの数字がずれる理由は、公式資料では確認できていません。この表は「平均単価から自分の増額を見積もる方法は使えない」ことを示すもので、託送料金のうち家庭の負担がいくらかを示すものではありません

同じ条件の1か月分が12か月続くと仮定した計算例では、30A・260kWhの増額は約3,047円(253.93円×12)です。契約アンペアごとの月の増額の一覧と、東京電力以外の会社の見直し内容は電気代の値上げ 2026年11月にあります。

ご自身の契約で確認するポイント

託送料金の数字そのものは、利用者の請求額の増減を示すものではありません。自分の増額は、契約の種類で調べ方が分かれます。

あなたの契約 調べ方
東京電力エナジーパートナーの従量電灯B(規制料金) 「基本料金の増額+0.05円×使用量」で計算できます(上の表)。使用量が少なくても、契約アンペアが大きければ増額は大きくなります
東京電力エナジーパートナーの自由料金プラン(スタンダード等) 関東エリアとそれ以外で単価表が別です。同社の新旧の単価表で、基本料金と電力量料金を比べてください
そのほかの大手電力 各社の発表で、反映の仕方と適用日が違います。電気代の値上げ 2026年11月の一覧から、会社の発表を確認してください
北陸電力・北陸エリア 東京電力エナジーパートナーは北陸エリアの見直しは実施しないとしています。北陸電力は、2026年10月1日時点で改定の発表を確認できていません
上記以外の小売電気事業者 託送料金の変動を料金に反映するかは各社の判断で、この記事では公式資料を確認していません。会社の案内を確認してください

確認の順は次のとおりです。

  1. 検針票(電気ご使用量のお知らせ)で、電力会社名とプラン名(従量電灯Bなど)を確認する
  2. その電力会社が、2026年11月1日の見直しを発表しているかを、会社の公式サイトで確認する
  3. 料金単価表で、自分のプランの基本料金・電力量料金の新旧単価を見る

ここで紹介した平均単価は、エリア全体の低圧の平均であり、契約アンペアや使う量によって実際の増減は異なります。見直しの発表がない会社やエリアでは、2026年10月1日時点で改定は確認できていません。国の電気・ガス料金支援の状況は電気代はなぜ冬に上がる?で、2026年9月29日時点の公式情報として整理しています。

電力会社を見直すかどうかを考えるとき

託送料金の見直しは、電力会社の選び方を考えるきっかけのひとつにはなりますが、乗り換えを急ぐ必要があるかどうかは、契約内容次第です。

  • 確認する余地がある人: 東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bでは、増額のほとんどが基本料金で、使用量による増額は100kWhあたり5円です。契約アンペアが大きい家庭ほど増額が大きくなるため、契約アンペアの見直しや、基本料金の構成が違う料金プランの比較を検討する余地があります。使い方・契約・電力会社の3段での見直しの優先順位は電気代を安くする方法、比較の基準は電力会社の選び方で整理しています
  • 急がなくてよい人: 発表の対象外の会社と契約している人や、更新の時期に合わせて見直せばよい人は、慌てて手続きをする必要はありません。解約金や契約期間の条件は会社・プランで異なるので、切り替える場合は先に確認してください

託送料金の話とは別に、契約を見直すなら

託送料金の見直しについては、ここまでの内容で足りる方もいます。今の契約に困っていない方は、この節を読み飛ばして問題ありません。基本料金と電力量料金の構成を含めて、複数社の料金を比べたい方に向けて、候補を挙げておきます。

広告

複数社の料金を横断的に比較する候補として、電気チョイスの公式サイトで内容を確認できます。

【電気チョイス】

広告

切り替え先の候補として、エルピオでんきの公式サイトで料金プランを確認できます。

「単純明快な安さ」でお客さまに還元します!

まとめ

託送料金は、送配電ネットワークの維持に使われ、電気料金の約30%を占める費用として、電気料金に含まれています。2026年11月1日の見直しは、物価・労務費・金利の上昇を背景とした収入の見通しの変更(7月10日申請、9月4日承認)を受けたものです。エリアによって託送料金の平均単価の変わり方が異なり、小売の電気料金への反映も会社・プランごとに異なります。東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bでは、平均単価の上げ幅に使用量を掛けても自分の増額は出ず、30Aなら約214kWhを境に見積もりと実際の増額の大小が逆転します。各社の発表内容を一覧で確認したい場合は、電気代の値上げ 2026年11月 — 大手電力10社の料金見直しを各社の公式発表で一覧にするをご覧ください。

電気代が上がった原因を検針票で切り分ける手順は電気代が高い原因 — 検針票で使用量と単価を切り分ける順番で整理しています。