契約している電力会社の名前を、ニュースの見出しで見かける。「新規受付を停止」「電力事業から撤退」。読んだ瞬間、頭に浮かぶのは「うちの電気、いきなり止まるんじゃないか」という不安です。契約している新電力が撤退したり倒産したりしたとき、実際には何が起きるのでしょうか。

この記事の要点

  • 契約している小売電気事業者が撤退・倒産しても、電気の供給が即座に止まるわけではありません。家庭まで電気を届ける送配電は、契約先の小売電気事業者にかかわらず、地域の一般送配電事業者が一貫して担っています(2026年8月時点・資源エネルギー庁公式)
  • 高圧・特別高圧で電気を使う事業者向けには、一般送配電事業者が「最終保障供給」というセーフティネットを用意しています。2026年4月1日時点の契約件数は全国で1,782件です(2026年8月時点・経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会公式)
  • 一般家庭など低圧契約の場合、最終保障供給の対象ではなく、地域の大手電力会社が引き続き提供する「経過措置料金」が実質的な受け皿になっています(2026年8月時点・資源エネルギー庁公式)

新電力が撤退・倒産しても、電気がすぐ止まらない理由

2016年4月の電力小売全面自由化以降、家庭も含むすべての消費者が電力会社や料金メニューを自由に選べるようになりました。一方、発電した電気を家庭や事業所まで届ける送配電網は、自由化後も地域の一般送配電事業者が引き続き管理・維持しています(2026年8月時点・資源エネルギー庁公式)。

つまり、契約している小売電気事業者(電力会社)が変わっても、電気の届き方や品質そのものは変わりません。資源エネルギー庁のよくある質問では、小売電気事業者が電力供給を停止する場合でも、契約先がない「無契約」の状態になった直後に電気の供給がただちに止まるわけではないとされています。ただし、無契約の状態が長期間続くと供給が止まってしまうこともあり得るため、早めに新しい契約先を探すことが必要とされています(2026年8月時点・同庁公式)。

最終保障供給とは? — 一般送配電事業者が担う安全網

最終保障供給とは、いずれの小売電気事業者とも電気の需給契約が成立しない需要家に対して、地域の一般送配電事業者が電気を供給する制度です。東京電力パワーグリッドは、この制度の対象を「高圧以上のお客さま」と説明しており、契約期間は原則1年以内(契約が成立しない場合は更新可能)としています(2026年8月時点・同社公式)。

料金は、かつては地域の大手電力会社が提供する標準料金メニューの1.2倍を基準に設定されていました。しかし自由料金との間で価格が逆転する(最終保障供給の方が安くなる)現象が生じたことから、電力・ガス取引監視等委員会は、卸電力市場価格やインバランス料金を反映する仕組みへの見直しを進めました。最終保障供給はあくまで一時的なセーフティネットであり、契約者にはできるだけ早く別の小売電気事業者と契約を結び直すことが前提とされています(2026年8月時点・電力・ガス取引監視等委員会公式)。

経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会が2026年4月15日に公表した資料によると、2026年4月1日時点の最終保障供給契約は全国で1,782件(東京エリアが1,522件と大半を占める)で、2025年4月1日時点の2,562件から減少傾向にあります(2026年8月時点・同委員会公式)。

家庭(低圧)の場合はどうなる? — 経過措置料金という選択肢

ここまでの最終保障供給は、実は高圧・特別高圧で電気を使う事業者向けの制度で、一般家庭など低圧契約は対象に含まれていません(2026年8月時点・東京電力パワーグリッド公式・関西電力送配電公式)。では、契約している新電力が撤退した家庭は、どうすればよいのでしょうか。

家庭の場合、選択肢は大きく2つです。1つは、他の新電力と新たに契約すること。もう1つは、地域の大手電力会社(自由化前から続く、いわゆるみなし小売電気事業者)が引き続き提供している「経過措置料金」に申し込むことです。経過措置料金とは、電力小売全面自由化にあたり、事業者間の競争が十分に進むまでの消費者保護策として存続している規制料金メニュー(従量電灯など)で、資源エネルギー庁は、現在、全国すべての地域で経過措置料金を存続することにしていると説明しています(2026年8月時点・同庁公式)。経過措置料金は規制料金であるため、燃料費調整額に基準燃料価格の1.5倍という上限が設けられている点も特徴です(詳しくは検針票の「燃料費調整額」に目が留まったらで解説しています)。

契約先を選び直す流れ — 解約と切り替えの実務

契約先の小売電気事業者が撤退・倒産する際は、契約終了日が事前に案内されるのが一般的です。高圧の事業者向け手続きを例にすると、関西電力送配電はよくある質問で、まず他の小売電気事業者と契約できないかを確認し、それでも契約が成立しない場合に、現在契約している事業者が一般送配電事業者へ託送供給契約の廃止を申し込む流れを説明しています。その後、一般送配電事業者から需要家へ電気の利用継続を確認する連絡があり、その際に最終保障供給契約の案内も行われるため、需要家側から一般送配電事業者へ事前に連絡する必要はないとされています(2026年8月時点・関西電力送配電公式)。

家庭(低圧)の場合は、この最終保障供給の手続きとは異なります。低圧契約は最終保障供給の対象外のため、最終保障供給の申込みではなく、契約終了日までに他の小売電気事業者と契約するか、経過措置料金に申し込む必要があります(2026年8月時点・資源エネルギー庁公式)。切り替え自体の具体的な手順やスマートメーターとの関係、賃貸物件での可否は電力会社の切り替え方法とデメリット — 賃貸でもできる?で整理しています。

なお、2022年から2023年にかけて、卸電力市場価格の高騰などを背景に、新規契約の受付を停止したり事業から撤退したりする新電力の例が相次ぎました。特定の事業者の状況にかかわらず、契約先が信頼できるかどうかを見極める視点として、供給実績や料金体系の説明が明確かどうかも、契約前の確認材料になります。電気・ガスをセットで契約している場合の注意点は電気・ガスセット契約は本当にお得? 比較のポイントで整理しています。

よくある疑問

契約している電力会社が急に倒産した場合、電気はすぐ止まりますか?

すぐには止まりません。家庭や事業所まで電気を届ける送配電は、契約している小売電気事業者にかかわらず、地域の一般送配電事業者が一貫して担っているためです。ただし、契約先がない「無契約」の状態が長期間続くと供給が止まってしまう可能性もあるため、契約終了日までに新しい契約先を決めておくことが必要です(2026年8月時点・資源エネルギー庁公式)。

最終保障供給とは何ですか?誰でも申し込めますか?

最終保障供給とは、いずれの小売電気事業者とも需給契約が成立しない需要家に対して、地域の一般送配電事業者が電気を供給する制度です。対象は高圧・特別高圧で電気を使う事業者で、一般家庭など低圧契約は対象に含まれていません。契約期間は原則1年以内で、更新も可能です(2026年8月時点・東京電力パワーグリッド公式)。

一般家庭が契約している新電力が撤退した場合、どうすればよいですか?

一般家庭(低圧契約)は最終保障供給の対象ではないため、他の新電力と新たに契約するか、地域の大手電力会社が引き続き提供している「経過措置料金」(従量電灯などの規制料金メニュー)に申し込むことになります。経過措置料金は、資源エネルギー庁によると、現在、全国すべての地域で存続することとされています(2026年8月時点・同庁公式)。

最終保障供給の料金は、通常の電気料金より高いのですか?

最終保障供給は一時的なセーフティネットと位置づけられており、料金はかつて地域の標準料金メニューの1.2倍を基準としていました。現在は自由料金との価格の逆転を防ぐため、卸電力市場価格などを反映する仕組みに見直されており、契約者にはできるだけ早く別の小売電気事業者と契約を結び直すことが前提とされています(2026年8月時点・電力・ガス取引監視等委員会公式)。

まとめ

契約している新電力が撤退・倒産しても、送配電を担う一般送配電事業者が変わらない限り、電気がその日のうちに止まることはありません。高圧・特別高圧の事業者には最終保障供給、家庭など低圧契約には経過措置料金という、それぞれの受け皿が制度として用意されています。ニュースで契約先の名前を見かけたときは、まず契約終了日を確認し、その日までに次の契約先を決める。落ち着いて手順を踏めば、電気のある暮らしが途切れることはありません。