契約している電力会社の名前を、ニュースの見出しで見かける。「新規受付を停止」「電力事業から撤退」。読んだ瞬間、頭に浮かぶのは「うちの電気、いきなり止まるんじゃないか」という不安です。この記事は、家庭(低圧)の契約者が「いま何をすればよいか」を、状況別に分けて整理します。
この記事の要点
- 契約先が撤退・倒産しても、送配電は地域の一般送配電事業者が一貫して担うため、無契約になった直後に電気がただちに止まるわけではありません。ただし無契約が長く続くと止まることもあり、「当日は大丈夫」という保証ではありません(2026年8月時点・資源エネルギー庁公式)
- 家庭(低圧)が動く基準は「契約先から、無契約になる期日の通知が届いたか」です。通知が見当たらなくても、契約先の公式発表やマイページで契約終了日を確認し、不明なら契約先に問い合わせて、切替先を探しておきます。通知が届いたら、その期日までに次の契約先を決めます(2026年8月時点・同庁公式)
- 最終保障供給は高圧・特別高圧の事業者向けで、家庭は対象外です。家庭の受け皿は「他の新電力」か「大手電力の経過措置料金」の2つで、どちらも申込みが必要です(2026年10月時点・東京電力パワーグリッド公式/2026年8月時点・同庁公式)
新電力が撤退・倒産しても、電気がすぐ止まらない理由
2016年4月の電力小売全面自由化以降、家庭も含むすべての消費者が電力会社や料金メニューを自由に選べるようになりました。一方、発電した電気を家庭や事業所まで届ける送配電網は、自由化後も地域の一般送配電事業者が引き続き管理・維持しています(2026年8月時点・資源エネルギー庁公式)。契約している小売電気事業者が変わっても、電気の届き方や品質そのものは変わりません。
資源エネルギー庁のよくある質問では、電力会社が倒産・撤退する場合、無契約状態になるまでの期日について電力会社から通知が来ることになっており、その期日までに新しい小売電気事業者と契約すれば供給は続くとされています。期日に間に合わなくても直ちに止まるわけではありませんが、無契約の状態が長引くと供給が止まることもあり得るため、早めに切り替え先を探す必要があるとされています(2026年8月時点・同庁公式)。
つまり「止まらない理由」は送配電が別会社であることで、「止まらない期間」は公式に日数が示されているわけではありません。ここを「何日は安全」と読み替えないことが、この記事でいちばん大事な点です。
家庭(低圧)はどう動く? — 状況別の分かれ道
状況によって、やることが変わります。
| いまの状況 | 契約の状態 | 動き方 |
|---|---|---|
| ニュースで社名を見ただけ。契約先から通知は見当たらない | 契約終了日が決まっているかは、通知の有無だけでは判断できない | 契約先の公式発表・マイページで契約終了日を確認する。不明なら契約先に問い合わせ、切替先も探しておく(慌てて解約はしない) |
| 無契約になる期日の通知が届いた | 期日以降は契約先がなくなる | 期日までに他の新電力か経過措置料金に申し込む。期日を過ぎても即停止ではないが、無契約を長引かせない |
| 期日が迫っていて、比較する時間がない | 期日が近い | まず経過措置料金などの受け皿を確保し、料金プランの比較は後で落ち着いて行う、という順番も選べる |
| 勤務先・店舗など、高圧で契約している | 高圧は最終保障供給の対象 | 次の節を参照。契約先が決まらない場合の手続きが家庭とは異なる |
上の表の「動き方」は、公式の説明(通知が来る・期日までに契約すれば供給が続く・無契約が長引くと止まり得る)から組み立てた整理です。通知の届き方や期日は事業者ごとに異なるため、実際の案内を優先してください。
家庭の受け皿は2つ — 新電力に乗り換えるか、経過措置料金か
家庭(低圧)の場合、選択肢は大きく2つです。1つは、他の新電力と新たに契約すること。もう1つは、地域の大手電力会社(自由化前から続く、いわゆるみなし小売電気事業者)が引き続き提供している「経過措置料金」に申し込むことです。経過措置料金とは、電力小売全面自由化にあたり、事業者間の競争が十分に進むまでの消費者保護策として存続している規制料金メニュー(従量電灯など)で、資源エネルギー庁は、現在、全国すべての地域で経過措置料金を存続することにしていると説明しています(2026年8月時点・同庁公式)。
どちらを選ぶかの目安は次のとおりです。
- 期日までに時間がない、まず確実に契約先を確保したい: 経過措置料金は規制料金で、燃料費調整額に基準燃料価格の1.5倍という上限が設けられています(詳しくは検針票の「燃料費調整額」に目が留まったらで解説しています)。受け皿として確保したうえで、あとから比較して乗り換えることもできます
- 時間があり、使用量や時間帯に合ったプランを選びたい: 他の新電力のプランを比較します。燃料費調整額の上限の有無やプランの条件は会社・プランごとに違うため、約款や重要事項説明で確認します。比較の軸は電気料金の比較で見る5つの基準で整理しています
- 「また撤退されないか」が不安: 供給実績や料金体系の説明が明確かを確認します。登録の有無など公的情報で確認できる範囲は「詐欺みたいな電力会社」が怖くて切り替えられないときで整理しています
切り替え自体の具体的な手順やスマートメーターとの関係、賃貸物件での可否は電力会社の切り替え方法とデメリット — 賃貸でもできる?で整理しています。電気・ガスをセットで契約している場合の注意点は電気とガスをまとめるデメリット — セット割より単体で選ぶほうが安いケースをご覧ください。
最終保障供給とは? — 高圧以上の事業者向けの安全網(家庭は対象外)
ここまでが家庭向けの話です。ニュースで目にする「最終保障供給」は、家庭が使う制度ではありません。
最終保障供給とは、いずれの小売電気事業者とも電気の需給契約が成立しない需要家に対して、地域の一般送配電事業者が電気を供給する制度です。東京電力パワーグリッドは、この制度の対象を「高圧以上のお客さま」と説明しており、契約期間は原則1年以内(契約が成立しない場合は更新可能)としています(2026年10月時点・同社公式)。低圧契約が対象外であることは、関西電力送配電のよくある質問でも説明されています(2026年8月時点・関西電力送配電公式)。
高圧の事業者向け手続きを例にすると、関西電力送配電は、まず他の小売電気事業者と契約できないかを確認し、それでも契約が成立しない場合に、現在契約している事業者が一般送配電事業者へ託送供給契約の廃止を申し込む流れを説明しています。その後、一般送配電事業者から需要家へ電気の利用継続を確認する連絡があり、その際に最終保障供給契約の案内も行われるため、需要家側から事前に連絡する必要はないとされています(2026年8月時点・同社公式)。
料金は、かつては地域の大手電力会社が提供する標準料金メニューの1.2倍を基準に設定されていました。しかし自由料金との間で価格が逆転する現象が生じたことから、電力・ガス取引監視等委員会は、卸電力市場価格やインバランス料金を反映する仕組みへの見直しを進めました。最終保障供給はあくまで一時的なセーフティネットであり、契約者にはできるだけ早く別の小売電気事業者と契約を結び直すことが前提とされています(2026年8月時点・電力・ガス取引監視等委員会公式)。東京電力パワーグリッドのページには、約款の見直しと変更届出に関するお知らせ(2026年9月・10月掲載)や、2026年11月分の電気料金に適用する市場価格調整単価の変更が案内されているため、高圧の方は最新の約款と料金を同社の公式ページで確認してください(2026年10月時点)。
なお、2022年から2023年にかけて、卸電力市場価格の高騰などを背景に、新規契約の受付を停止したり事業から撤退したりする新電力の例が相次ぎました。
よくある疑問
契約している電力会社が急に倒産した場合、電気はすぐ止まりますか?
すぐには止まりません。家庭や事業所まで電気を届ける送配電は、契約している小売電気事業者にかかわらず、地域の一般送配電事業者が一貫して担っているためです。ただし、契約先がない「無契約」の状態が長期間続くと供給が止まってしまう可能性もあるため、契約終了日までに新しい契約先を決めておくことが必要です(2026年8月時点・資源エネルギー庁公式)。
最終保障供給とは何ですか?誰でも申し込めますか?
最終保障供給とは、いずれの小売電気事業者とも需給契約が成立しない需要家に対して、地域の一般送配電事業者が電気を供給する制度です。対象は高圧・特別高圧で電気を使う事業者で、一般家庭など低圧契約は対象に含まれていません。契約期間は原則1年以内で、更新も可能です(2026年10月時点・東京電力パワーグリッド公式)。
一般家庭が契約している新電力が撤退した場合、どうすればよいですか?
一般家庭(低圧契約)は最終保障供給の対象ではないため、まず契約先から届く無契約になる期日の通知を確認し、その期日までに、他の新電力と新たに契約するか、地域の大手電力会社が引き続き提供している「経過措置料金」(従量電灯などの規制料金メニュー)に申し込むことになります。経過措置料金は、資源エネルギー庁によると、現在、全国すべての地域で存続することとされています(2026年8月時点・同庁公式)。
最終保障供給の料金は、通常の電気料金より高いのですか?
最終保障供給は一時的なセーフティネットと位置づけられており、料金はかつて地域の標準料金メニューの1.2倍を基準としていました。現在は自由料金との価格の逆転を防ぐため、卸電力市場価格などを反映する仕組みに見直されており、契約者にはできるだけ早く別の小売電気事業者と契約を結び直すことが前提とされています(2026年8月時点・電力・ガス取引監視等委員会公式)。
次の契約先を探すなら
ここからは手続きとは別の話です。契約終了日の心配がなく、今の契約先のまま続ける方は、読み飛ばして問題ありません。契約終了日が決まった、または確認できずに切替先を探したい方に向けて、次の契約先を自分で選び直すときの比較の候補を挙げておきます。
まとめ
契約している新電力が撤退・倒産しても、送配電を担う一般送配電事業者が変わらないため、無契約になった直後に電気がただちに止まるわけではありません。ただし、無契約が長引けば止まり得るので、家庭(低圧)は「契約先から期日の通知が届いたか」と契約終了日の確認を軸に動きます。通知が見当たらなくても、契約先の公式発表やマイページで契約終了日を確認し、不明なら問い合わせて切替先を探しておきます。期日が分かったら、期日までに他の新電力か経過措置料金のどちらかに申し込みます。最終保障供給は高圧・特別高圧の事業者向けで、家庭は対象外です。




