空港に着き、レンタルWiFiのカウンターに並ぶ。前の順番を待ちながら、受け取り機のディスプレイと家族の顔を見比べる。子どもはタブレットで動画を見たがり、自分と配偶者はそれぞれ地図アプリと翻訳アプリを開いておきたい。──この1台で、全員分は足りるのだろうか。
この記事の要点
- ドコモMAX・ポイ活MAXは「世界そのままギガ」が申込み不要で最大30GB・15日まで無料です。有料になるプランの人がアメリカ向け4G無制限(1日2,370円)と1人ずつの個別回線を通信料だけで比べると、3人は5日間まではWiFi、6日間以上は個別回線が安くなります。4人以上はこの条件なら日数を問わずWiFiが安くなります(2026年10月時点・各社公式)
- グローバルWiFi公式では、WiFi機器1台は最大5台まで同時接続できますが、快適に使うには2台までが推奨されています(上限ではなく推奨)。同時に使う端末が3台以上なら、ルーターを増やす計算が必要です
- 1人の回線をテザリングで分け合えば、掲載したドコモの料金で比べると総額は1回線分で済みますが、データ量はその1契約から減り、ホストのスマホの電池も使います。総額・同時接続・別行動の3点を合わせて選びます
レンタルWiFiとeSIM、何が違う? — 1台を共有するか、1人ずつ持つか
どちらも「現地でネットにつながる」という結果は同じですが、仕組みがまったく違います。
レンタルWiFiは、モバイルルーターという小さな通信機器を1台借りて持ち歩く方式です。ルーターの電源を入れておけば、その電波の届く範囲でスマホ・タブレット・PCなど複数の端末が同時につながります。誰か1人がルーターを持ち歩き、他の家族はそのWi-Fiに接続する形になります。
eSIMは、スマホ本体に「現地用の回線」をデータとして追加する方式です。1人が1つのプランを、自分のスマホに直接設定します。ルーターのような別機器を持ち歩く必要がない代わりに、家族それぞれが自分の端末に個別に設定しておく必要があります。
つまり、レンタルWiFiは「1台を全員で分け合う」仕組み、eSIMは「1人が1つ持つ」仕組みです。さらに、誰かの回線をテザリングで他の人に分ける方法もあり、これは「1回線を分け合う」第3の形になります。旅の人数や過ごし方によって、どれが合理的かが変わってきます。
費用はどう決まる? — 人数と日数で総額の分かれ目が動く
レンタルWiFiの料金は「1台1日いくら」という決まり方をします。グローバルWiFi公式サイトによると、アメリカ本土向けの4G無制限プランは1日2,370円です(2026年10月時点・グローバルWiFi公式)。7日間の旅行なら、次のような計算になります。
2,370円 × 7日間 = 16,590円。
このルーター1台分の金額は、持ち歩く人数が1人でも4人でも変わりません。一方、1人ずつ回線を持つ場合は人数分が積み上がります。ここでは、まず契約しているプランで分けます。ドコモ公式によると、ドコモ MAX・ドコモ ポイ活 MAX・ahamoは「世界そのままギガ」の申込みが不要です。MAX系は200以上の国・地域で最大30GB・15日まで無料と記載されています。ahamoは、公式ページで具体的な条件を確認できませんでした。この表は、世界そのままギガが有料になるプラン(ドコモ ポイ活 20、ドコモ mini、eximo、irumoなど)の人を対象に、アメリカ本土の料金(24時間980円・4日間3,280円・7日間5,280円。2026年10月時点・NTTドコモ公式)を1人ずつ使う場合と並べます。MAX系の人は、無料枠の範囲で足りるかを先に確認してください。
| 日数 | レンタルWiFi(1台共有) | 個別回線 2人 | 個別回線 3人 | 個別回線 4人 | 個別回線 5人 |
|---|---|---|---|---|---|
| 4日間 | 9,480円 | 6,560円 | 9,840円 | 13,120円 | 16,400円 |
| 7日間 | 16,590円 | 10,560円 | 15,840円 | 21,120円 | 26,400円 |
分かれ目は人数だけでなく日数でも動きます。
- 2人: 日数を問わず個別回線のほうが安くなります
- 3人: 4日間は個別回線が9,840円でWiFiの9,480円を上回りますが、5日間は11,940円対11,850円で、まだWiFiが安い計算です。6日間になると14,040円対14,220円で逆転し、個別回線が安くなります。個別回線のプランは日数が延びるほど1日あたりの単価が下がるのに対し、WiFiは1日あたり2,370円で一定だからです
- 4人以上: この条件では、1日の利用でも30日間でもWiFiのほうが安くなります
この表は通信料だけの比較です。受取・返却にかかる費用、データ量の差、ドコモ以外の契約者(povoや楽天モバイルなど)や、料金がかからないドコモのプランの場合は含みません。旅行用eSIMの料金は、各社の公式ページがプランを画面上で選ぶ形式で、2026年10月16日時点では取得できませんでした。料金は断定せず、「1人あたりいくらまでなら、WiFiより安いか」を逆算して示します。購入画面での1人あたりの料金が下の額以下なら、人数分を買ってもWiFiより安くなります。
| 人数 | 4日間(WiFi 9,480円)の目安 | 7日間(WiFi 16,590円)の目安 |
|---|---|---|
| 2人 | 4,740円 | 8,295円 |
| 3人 | 3,160円 | 5,530円 |
| 4人 | 2,370円 | 4,147円 |
| 5人 | 1,896円 | 3,318円 |
同時接続の公式条件で、結論はどう変わるか
ここまでの比較は「WiFi1台で全員が足りる」という前提です。グローバルWiFi公式のよくある質問では、WiFi機器1台は最大5台まで同時接続できるものの、「機器1台につき同時接続デバイスは2台までのご利用を推奨」と案内されています。また、同じ電波を分け合うため速度が落ちることがあり、1日の容量も台数で分け合います。容量制限のあるプランで上限を超えると、翌日0時頃まで速度低下や通信停止になる場合があります。大人数での利用には無制限プランが勧められています(2026年10月時点・グローバルWiFi公式)。
つまり、人数ではなく「同時に使う端末が何台か」が品質の分かれ目になります。推奨の2台に収めるために、1日2,370円のプランをルーター2台で借りられると仮定して単純に計算すると、次のようになります(同じプランを複数台借りられるかの条件は、公式で確認できていません)。
| 同時に使う端末 | 必要なルーター(2台まで/台) | 4日間 | 7日間 |
|---|---|---|---|
| 1〜2台 | 1台 | 9,480円 | 16,590円 |
| 3〜4台 | 2台 | 18,960円 | 33,180円 |
| 5〜6台 | 3台 | 28,440円 | 49,770円 |
4人が4台のスマホを同時に使うなら、ルーター2台の仮定計算で4日間18,960円となり、ドコモの個別回線4人分(13,120円)を上回ります。7日間でも33,180円対21,120円です。「4人ならWiFi1台が安い」という結論は、推奨を超えた1台に4台をつなぐ前提の話であり、推奨の範囲に収めるなら逆転します。
反対に、全員が常に同時に使うわけではなく、地図や翻訳を使う人は1人ずつ交代する、子どものタブレットは宿でだけ使う、といった使い方なら、同時に使う端末は1〜2台に収まりやすく、WiFi1台の総額の安さが生きます。
1回線をテザリングで分け合う — 総額は1回線分、ただし条件がある
3つめの選択肢が、1人の契約したスマホをホストにして、他の人はそのテザリングにつなぐ方法です。ドコモの公式FAQでは、「世界そのままギガ」でテザリングは利用可能とされています。povoの海外データ1GB(3日間)のページでも、テザリングは利用可能ですが機種や渡航先によって異なる、とされています(2026年10月時点)。
総額は人数に関係なく、ホスト1人分の回線料金になります。ホストが世界そのままギガが有料のプランなら、4日間3,280円、7日間5,280円です。掲載したドコモの料金で比べると、WiFiの9,480円・16,590円より1回線を共有するほうが安くなります(旅行用eSIMの料金は取得できていないため、比較していません)。必要な容量と端末の接続上限を満たす場合の選択肢として、次の条件を合わせて判断してください。
- データ量はホスト1人の契約から減る: 世界そのままギガは、日本で契約している料金プランのデータ量を使います。国内のデータ量を超えた場合や、月間の利用データ量が30GBを超えた場合は、当月末まで速度が制限されます(NTTドコモ公式)。povoの海外データ1GB(3日間)なら、容量は1GBです。全員で分け合うと、すぐに足りなくなることがあります
- 同時に何台までつなげるかは、確認できていません: ドコモ・povoの公式ページで、テザリングの同時接続台数の上限は確認できませんでした。書かれていない値は推測せず、渡航前に契約中の事業者に確認してください
- ホストのスマホが離れられない: ホストが別行動をすると、他の人はつながらなくなります。ホストの電池の減りも早くなります
- ホストの契約プランで料金が変わる: ここでの計算は、世界そのままギガが有料になるドコモのプランを想定したものです。MAX系は申込み不要で最大30GB・15日まで無料、ahamoも申込み不要の対象とされています。ahamoなど別の契約の場合は、ahamoの海外利用の記事をあわせて確認してください
ホストを1人決めて、その人が荷物を預かる・常に近くにいる家族旅行で、容量と接続台数の条件を満たせるなら、検討する価値があります。逆に、全員が自由に動き回る旅行や、動画を長く見る旅行には向きません。
レンタルWiFiが向くケース — 複数人・複数端末の旅行
レンタルWiFiが合理的なのは、次のような場面です。
- 子どものタブレットやノートPCも一緒に使いたい旅行: eSIM非対応の端末や、そもそも通信機能を持たない端末でも、Wi-Fiにつなぐだけで使えます
- eSIM非対応の機種が家族の中に混ざっている旅行: 全員の端末を個別に確認する手間がありません
- 常に一緒に行動し、同時に使う端末が2台程度の旅行: ルーターの電波が届く範囲にいる限り、全員が同時につながります。上の表のとおり、4人以上や、日数が短い3人で総額が安くなりやすい使い方です
ただし、都合のいい話ばかりではありません。全員が同時に動画を見るような使い方では速度が落ちやすく、容量制限のあるプランでは1日の容量を全員で分け合うことになる点は、前の節で見たとおりです。
eSIMが向くケース — 1〜2人、または別行動が多い旅行
反対に、eSIMが合理的なのは次のような場面です。
- 1人か2人の旅行: 人数分のプラン数がそもそも少ないため、eSIMの「人数分」という費用構造が不利になりにくい。上の表のとおり、2人なら日数を問わず個別回線のほうが安くなる条件があります
- 日中に別行動が多い旅行: ルーターを共有する仕組みでは、ルーターを持たない人はその時間つながりません。1人ずつ回線を持つeSIMなら、離れていてもそれぞれが自分でつながります
- 荷物を増やしたくない旅行: ルーター本体や充電器を持ち歩く必要がありません
eSIMの具体的な購入・設定手順は、「QRコードを読み取ってください」で止まったら — iPhone・AndroidのeSIM設定手順で解説しています。
併用という選択肢 — 「基本は共有、1人だけ個別」
家族旅行では、レンタルWiFiと個別回線を組み合わせる考え方も有効です。たとえば、普段は家族全員がレンタルWiFi1台の電波に入りながら移動し、途中で1人だけ別行動をとる日は、その人だけ個別回線を足す、という形です。
グローバルWiFi公式サイトの「別行動用プラス1台オプション」は、1GBが1,540円、3GBが1,980円、5GBが2,310円(税込・1台)です。容量は渡航期間中の合計で、1日あたりではなく、使い切ると通信は停止して追加はできません。メインが無制限プランの場合だけ申し込め、空港または宅配でメインのWiFiとセットで受け取ります(2026年10月時点・グローバルWiFi公式)。
別行動が1日だけなら、ドコモの世界そのままギガの24時間980円のほうが、プラス1台の最も安い1GB(1,540円)より安く、容量も契約中のプラン分を使えます。2日間でも1,780円のため、1GBで足りる使い方なら、プラス1台のほうが安くなる場合があります。別行動の日数と必要な容量で選び分けてください。
家族旅行でこの組み合わせを検討する例はホノルル空港に着いてから困らない — ハワイ旅行の通信準備、家族旅行での選び方でも紹介しています。グアム旅行の人数別の総額は、povo・ドコモ・WiFiを並べたグアム旅行にWiFi・eSIMは必要か — 人数と滞在時間で決まる損益で比べています。
1〜2人の旅行や、渡航先ごとの選び方の基本については、海外旅行のスマホ、機内モードのまま我慢していませんか — eSIM・レンタルWiFi・ローミングの選び方 で仕組みごとに整理しています。あわせてご確認ください。
状況別の選び方
| 旅行の形 | 向く選び方 | 理由 |
|---|---|---|
| 2人で、日数が短い〜長い | 個別回線(eSIMなど) | 通信料のみの比較では、2人は日数を問わず個別回線が安い(ドコモ例) |
| 3人で5日間まで、同時に使う端末は2台程度 | レンタルWiFi1台 | 4日間9,480円、5日間11,850円で個別回線を下回る |
| 3人で6日間以上 | 個別回線 | 6日間で個別回線が14,040円、WiFiが14,220円 |
| 4人以上で、同時に使う端末が2台程度 | レンタルWiFi1台 | 日数を問わずWiFiが安い(ドコモ個別との比較) |
| 4人以上で、全員が同時にスマホを使う | 個別回線、または推奨内に収めるルーター複数台の計算 | 公式の推奨は1台につき2台まで。ルーター2台なら4日間18,960円と仮定すると、個別回線を上回る |
| ホストを決め、行動を共にする | 1回線のテザリング | 総額は1回線分。容量と電池がそのホストに集中する |
| 別行動が1日だけある | その日の分だけ個別回線 | 24時間980円(ドコモ例)がプラス1台1GB(1,540円)より安い |
よくある不安
家族の中にeSIM非対応のスマホやタブレットがあっても大丈夫ですか?
レンタルWiFiルーターは、Wi-Fiで接続できる機器であれば端末の種類を問わず使えます。eSIM非対応の古いスマホや、そもそも通信機能のないタブレット・PCも、ルーターのWi-Fiにつなぐだけで利用できます。全員の端末がeSIM対応かどうかを個別に確認する手間がない点は、レンタルWiFiの利点です。
旅行の途中で家族が別行動になる日はどうすればいいですか?
1台のルーターを共有する仕組み上、ルーターを持たない人はその間つながりません。グローバルWiFi公式サイトでは、別行動用のプラス1台オプションが案内されています(1GB 1,540円・3GB 1,980円・5GB 2,310円。容量は旅行期間の合計。メインが無制限プランの場合のみ。2026年10月時点・グローバルWiFi公式)。別行動が1日だけなら、その日の分だけ個別回線を持つ方法も考えられます。
eSIMとレンタルWiFi、両方契約すると料金は高くなりませんか?
全員分をeSIMでも、家族全員分の台数をレンタルWiFiでも用意すれば、当然その分費用はかさみます。多くの場合で検討されるのは「全員分のどちらか一方」ではなく、「基本はレンタルWiFi1台、外れて行動する1人だけ個別回線」のような組み合わせです。人数と行動パターンに応じて、必要な範囲だけ足すという考え方で検討すると無駄が出にくくなります。
レンタルWiFiは何人から得になりますか?
日数で変わります。「世界そのままギガ」が有料になるドコモのプランの人が、アメリカ向け4G無制限(1日2,370円)と1人ずつの個別回線を通信料だけで比べると、3人は5日間まではWiFiが安く、6日間以上は個別回線が安くなります。4人以上は、この条件では日数を問わずWiFiが安くなります。ただし、ドコモMAX・ポイ活MAXは申込み不要で最大30GB・15日まで無料の扱いのため、この比較の対象外です。また同時接続が3台以上になる場合は、公式の推奨(快適に使うには1台につき2台まで)を超えます(2026年10月時点・各社公式)。
1人のスマホのテザリングで家族がつなぐ方法は使えますか?
ドコモの公式FAQでは「世界そのままギガ」でテザリングは利用可能とされ、povoの海外データ1GB(3日間)のページでもテザリングは利用可能(機種や渡航先により異なる)とされています(2026年10月時点)。ただしデータ量は1人分の契約から使うため、同時に使う人数と容量が足りるか、端末の接続上限を満たすかが分かれ目になります。
まとめ
レンタルWiFiは「1台を分け合う」ので、人数が多い旅行で総額を抑えやすくなりますが、その分かれ目は日数と同時接続で動きます。MAX系を除く、世界そのままギガが有料になるドコモのプランの人が、アメリカ向け4G無制限と個別回線で通信料だけを比べると、2人は個別回線、3人は5日間まではWiFiで6日間以上は個別回線、4人以上はWiFiが安くなります。ただし同時に使う端末が3台以上なら、公式の推奨(快適に使うには1台につき2台まで)を超えるため、ルーターを増やした計算で見直す必要があります。
カウンターの列に並ぶ前に、人数、日数、同時に使う端末の数、別行動の有無を思い浮かべておく。それだけで、その1台で足りるかどうかの答えは、旅行中に慌てて考えるより先に出ています。
渡航先の料金から通信手段を選ぶ場合は、ドコモ・povo・eSIMを同じ表にまとめたページで確認できます。




