空港に着き、レンタルWiFiのカウンターに並ぶ。前の順番を待ちながら、受け取り機のディスプレイと家族の顔を見比べる。子どもはタブレットで動画を見たがり、自分と配偶者はそれぞれ地図アプリと翻訳アプリを開いておきたい。──この1台で、全員分は足りるのだろうか。
この記事の要点
- 海外のネット環境は「レンタルWiFi(1台を複数人で共有)」と「eSIM(1人ずつ端末に内蔵)」という、仕組みが違う2つの選択肢に整理できます
- グローバルWiFi公式サイトによると、WiFi機器1台は最大5台まで同時接続できますが、快適な通信品質を保つには2台までの利用が推奨されています(2026年8月時点・グローバルWiFi公式)
- 費用は「WiFiは人数が増えても1台分」「eSIMは1人ごとにプラン購入」という構造の違いがあり、人数が多い旅行では、条件によってはレンタルWiFiのほうが総額を抑えやすくなります
レンタルWiFiとeSIM、何が違う? — 1台を共有するか、1人ずつ持つか
どちらも「現地でネットにつながる」という結果は同じですが、仕組みがまったく違います。
レンタルWiFiは、モバイルルーターという小さな通信機器を1台借りて持ち歩く方式です。ルーターの電源を入れておけば、その電波の届く範囲でスマホ・タブレット・PCなど複数の端末が同時につながります。誰か1人がルーターを持ち歩き、他の家族はそのWi-Fiに接続する形になります。
eSIMは、スマホ本体に「現地用の回線」をデータとして追加する方式です。1人が1つのプランを、自分のスマホに直接設定します。ルーターのような別機器を持ち歩く必要がない代わりに、家族それぞれが自分の端末に個別に設定しておく必要があります。
つまり、レンタルWiFiは「1台を全員で分け合う」仕組み、eSIMは「1人が1つ持つ」仕組みです。旅の人数や過ごし方によって、どちらが合理的かが変わってきます。
費用はどう決まる? — 「1台分」か「人数分」か
レンタルWiFiの料金は「1台1日いくら」という決まり方をします。グローバルWiFi公式サイトによると、たとえばアメリカ行きの場合、データ容量無制限(4G)のプランは1日2,370円です(2026年8月時点・グローバルWiFi公式)。7日間の旅行なら、次のような計算になります。
2,370円 × 7日間 = 16,590円。
このルーター1台分の金額は、持ち歩く人数が1人でも4人でも変わりません。
一方のeSIMは、1人が渡航先・日数・データ容量を選んでプランを購入する仕組みです。同じ旅行に家族4人がそれぞれeSIMを持つ場合、必要なプランの数は4つになります(ただしサービスや端末によっては、テザリングやまとめ買いで分け合える場合もあります)。
つまり、レンタルWiFiの総額は人数が増えても「1台分」のまま、eSIMの総額は「人数分」だけ積み上がっていくという構造の違いがあります。人数が多い旅行で、1台を分け合うレンタルWiFiが検討しやすくなる理由はここにあります。eSIM側の総額は選ぶプランによって変わるため、実際の比較は人数分のプラン料金を各サービスの公式サイトで確認したうえで行ってください。
レンタルWiFiが向くケース — 複数人・複数端末の旅行
レンタルWiFiが合理的なのは、次のような場面です。
- 子どものタブレットやノートPCも一緒に使いたい旅行: eSIM非対応の端末や、そもそも通信機能を持たない端末でも、Wi-Fiにつなぐだけで使えます
- eSIM非対応の機種が家族の中に混ざっている旅行: 全員の端末を個別に確認する手間がありません
- 常に一緒に行動する旅行: ルーターの電波が届く範囲にいる限り、全員が同時につながります
ただし、都合のいい話ばかりではありません。グローバルWiFi公式サイトのよくある質問では、WiFi機器1台は最大5台まで同時接続できるものの、「より快適な通信品質・環境でご利用いただくには、機器1台につき同時接続デバイスは2台までのご利用を推奨」と案内されています(2026年8月時点・グローバルWiFi公式)。人数分の容量を1台で分け合うため、全員が同時に動画を見るような使い方では速度が落ちやすく、容量制限のあるプランでは1日の容量を全員で分け合うことになる点は確認しておく必要があります。
eSIMが向くケース — 1〜2人、または別行動が多い旅行
反対に、eSIMが合理的なのは次のような場面です。
- 1人か2人の旅行: 人数分のプラン数がそもそも少ないため、eSIMの「人数分」という費用構造が不利になりにくい
- 日中に別行動が多い旅行: ルーターを共有する仕組みでは、ルーターを持たない人はその時間つながりません。1人ずつ回線を持つeSIMなら、離れていてもそれぞれが自分でつながります
- 荷物を増やしたくない旅行: ルーター本体や充電器を持ち歩く必要がありません
eSIMの具体的な購入・設定手順は、「QRコードを読み取ってください」で止まったら — iPhone・AndroidのeSIM設定手順で解説しています。
併用という選択肢 — 「基本は共有、1人だけ個別」
家族旅行では、レンタルWiFiとeSIMを組み合わせる考え方も有効です。たとえば、普段は家族全員がレンタルWiFi1台の電波に入りながら移動し、途中で1人だけ別行動をとる日は、その人だけ日数分のeSIMを追加する、という形です。
グローバルWiFi公式サイトでは、別行動の予定がある人向けに2台目のルーターを追加できるオプションも案内されています(2026年8月時点・グローバルWiFi公式)。ルーターをもう1台借りるか、その人だけeSIMに切り替えるかは、荷物と費用のどちらを優先するかで選べます。家族旅行でこの組み合わせを検討する例はホノルル空港に着いてから困らない — ハワイ旅行の通信準備、家族旅行での選び方でも紹介しています。
1〜2人の旅行や、渡航先ごとの選び方の基本については、海外旅行のスマホ、機内モードのまま我慢していませんか — eSIM・レンタルWiFi・ローミングの選び方 で仕組みごとに整理しています。あわせてご確認ください。
よくある不安
家族の中にeSIM非対応のスマホやタブレットがあっても大丈夫ですか?
レンタルWiFiルーターは、Wi-Fiで接続できる機器であれば端末の種類を問わず使えます。eSIM非対応の古いスマホや、そもそも通信機能のないタブレット・PCも、ルーターのWi-Fiにつなぐだけで利用できます。全員の端末がeSIM対応かどうかを個別に確認する手間がない点は、レンタルWiFiの利点です。
旅行の途中で家族が別行動になる日はどうすればいいですか?
1台のルーターを共有する仕組み上、ルーターを持たない人はその間つながりません。グローバルWiFi公式サイトでは、別行動の予定がある場合向けに2台目のルーターを追加できるオプションが案内されています(2026年8月時点・グローバルWiFi公式)。あるいは、別行動になる人だけその日数分のeSIMを持っておく組み合わせも考えられます。
eSIMとレンタルWiFi、両方契約すると料金は高くなりませんか?
全員分をeSIMでも、家族全員分の台数をレンタルWiFiでも用意すれば、当然その分費用はかさみます。多くの場合で検討されるのは「全員分のどちらか一方」ではなく、「基本はレンタルWiFi1台、外れて行動する1人だけeSIM」のような組み合わせです。人数と行動パターンに応じて、必要な範囲だけ足すという考え方で検討すると無駄が出にくくなります。
まとめ
レンタルWiFiは「1台を分け合う」ので、人数が多い旅行で総額を抑えやすくなる場合がある仕組みです。eSIMは「1人が1つ持つ」ので、少人数や別行動が多い旅行で身軽さが生きます。
カウンターの列に並ぶ前に、旅の人数と、現地でどれだけ一緒に行動するかを思い浮かべておく。それだけで、その1台で足りるかどうかの答えは、旅行中に慌てて考えるより先に出ています。




