「海外旅行の現金は、いくら持てばいいのか」の答えは、行き先で変わります。カードで払う場面が多い国では、現金はチップと予備で足り、現金払いが多い国では、飲食や日用品の日額を積む必要があるからです。この記事では、行き先の現金比率・滞在日数・チップの3つで金額を計算する手順を、公式の統計と公式のチップの目安で示します。この記事は特定の金融商品(カード、海外での引き出しなど)を勧めるものではありません。

この記事の要点

  • 現金額は「現金でしか払えない場面の支出(日額×日数)+チップ+予備」で決めます
  • 現金の使われ方は国で大きく違います。ユーロ圏の店頭決済では、現金の割合(件数)がオランダの22%からマルタの67%まで(ECB・2024年)、米国は決済の14%(FRB・2025年)です。現地の住民の統計で、「現金しか使えない割合」でも旅行者の予算の上下限でもなく、現金で払う予定の場面を考える参考です
  • 現金で払う予定の場面を積み上げた計算例では、ハワイ型(チップ中心)は約130ドル、ユーロ圏型(4日間)は約138ユーロ、カード中心の国は約62ユーロです(単価・回数は仮定で、実額ではありません)

手順1: 行き先の現金事情で、型を選ぶ

次の統計は、現地の住民の支払い行動です。観光客がカードを使えるかどうかを示すものではないので、「現金を使う場面がどれくらい残っているか」の目安として読んでください(2026年10月時点)。

型 公式の統計 現金額の考え方
現金比率が低い 米国: 2025年の決済のうち現金は平均6回(全体の14%)。平均の携行現金は69ドルで、現金は「バックアップ」として使われている(FRB)。ユーロ圏のオランダは店頭決済の22%、フィンランドは27%、金額ベースのオランダは17%(ECB・2024年) 現金で払う予定の場面が少ない。チップと少額の予備が中心
現金比率が高い ユーロ圏平均は店頭決済の52%(件数)、金額では39%。レストラン・バー・カフェで57%、日用品の店で53%、自動販売機で55%。国別では、スロベニア64%、マルタ67%(ECB・2024年) 現金で払う予定の場面(飲食・売店・交通など)を書き出す
公式の統計を確認できない国 タイ・台湾・韓国・シンガポールなどは、今回、公式の現金比率の統計を確認できていません 初日は少額で様子を見る(下の「足りなくなったとき」参照)

ユーロ圏のホテルは、カードが46%で最も多く使われる場所でもあります。「現金が多い国」でも、場所によって使い分けが必要です。

手順2: 現金で払う予定の場面を書き出して積み上げる

統計は「その国で現金がどれくらい使われているか」の参考で、旅行者の予算の下限や上限ではありません。現金で払う割合を支出に掛けて額を出すのではなく、自分が現金で払う予定の場面を書き出して積み上げます。

現金額 = 現金で払う予定の場面の合計(単価 × 回数 × 日数)+ チップの現金 + 予備

現金で払う予定に入れる場面は、手順1の統計で現金が多く使われている場所が目安になります。ECBの調査では、ユーロ圏でレストラン・バー・カフェ(57%)、自動販売機(55%)、日用品の店(53%)は現金で払われることが多く、ホテル(カード46%)は逆にカードが多い場所でした。以下の単価と回数は仮定で、実際の支出額ではありません。

計算例A: 現金払いが残る国(ユーロ圏・1人・4日)

屋台やカフェ、売店、交通など、カードが使えない可能性がある場面を現金で払う予定にした例です。

  • カフェ・屋台: 1回6ユーロ × 1日2回 × 4日 = 48ユーロ
  • 自動販売機・売店: 1回3ユーロ × 1日1回 × 4日 = 12ユーロ
  • 公共交通の切符: 1回2.5ユーロ × 1日2回 × 4日 = 20ユーロ
  • 端数のチップ: 1日2ユーロ × 4日 = 8ユーロ
  • 予備を50ユーロと仮定
  • 合計は約138ユーロ

計算例B: カード中心の国(オランダ型・1人・4日)

現金で払う予定を、小さな場面だけに絞った例です。

  • 自動販売機・売店: 1回3ユーロ × 1日1回 × 4日 = 12ユーロ
  • 予備を50ユーロと仮定
  • 合計は約62ユーロ

同じ4日間でも、現金で払う予定の場面が多いか少ないかで、現金額は2倍以上違います。どの場面を現金にするかは、行き先の最新の情報(観光局の案内、旅行会社の資料)で確認してください。

手順3: チップ文化の国は、チップの現金を足す

チップは、公式の目安がある国だけ表にしています。国ごとの詳しい数字は海外のチップ、何%渡す?にまとめました(2026年10月時点)。

国・地域 公式の記載(要約) 現金への影響
ハワイ レストラン15〜20%、ポーター1個1ドル、ハウスキーピング1ベッド1泊1ドル、タクシー運賃の15%(ハワイ州観光局) 小額紙幣が必要
グアム レストランとタクシーは10〜15%。請求書に「Service Charge」があればチップ不要(グアム政府観光局) 請求書を見て判断
英国 チップは期待されない。任意のサービス料は請求書に記載。なければ10〜15%が喜ばれる(VisitBritain) 少額で足りる
スイス 義務はないが、レストランでは約10%か切り上げが慣例(スイス政府観光局) 小銭の切り上げ中心
台湾 ホテル・レストランで10%のサービス料が通例(交通部観光署) チップ用の現金は少なくてよい

計算例C: ハワイ型(2人・5日)

カード中心の国でも、チップの現金が必要になる例です。カード払いでのチップの書き方は、公的な情報を確認できなかったため、現金で渡す前提にしました。支出額は仮定です。

  • ディナー3回、1回80ドルと仮定。チップ15〜20%=12〜16ドル×3回=36〜48ドル
  • ハウスキーピング: ベッド2台×4泊×1ドル=8ドル
  • ポーター: 荷物2個×2回(到着・出発)×1ドル=4ドル
  • タクシー2回、1回の運賃30ドルと仮定。15%=4.5ドル×2回=9ドル
  • チップの合計: 57〜69ドル
  • 予備: 米国の平均の携行現金69ドルを目安に約70ドル
  • 合計は約127〜139ドル(約130ドル)

手順4: 持ち方 — 一度に持ち歩かない

外務省の海外安全ホームページは、「多額の現金、貴重品は持ち歩かないこと」と案内しています。日本人観光客を狙ったスリや置き引きが各地で多発している、というのがその理由です。イタリアの安全対策基礎データでは、「現金の携行は最小限に留めるとともに、分散して携行する」とされ、ホテルのセーフティーボックスについても、過信しないこと、現金を預けるときは金額を確認したうえで従業員のサインを取ることが望ましいとされています(2026年10月時点・外務省公式)。

計算で出した額を一度に持ち歩かず、1日分を財布に、残りを宿泊先に分ける形にします。

足りなくなったとき

現地で現金を追加で用意する手段(現地のATMの利用など)は、この記事では公式の情報を確認していないため、勧めたり比べたりしません。ATMや決済サービスの利用可否と条件は、人によって契約が違うため、出発前に契約先の案内を確認してください。現金の払いを減らして決済アプリや地図を使う旅行では、現地でデータ通信が使えることが前提になります。

申告制度(100万円超)は、ほとんどの人に関係しない

ここは従属的な話です。持つ現金が基準より少ない通常の旅行では、関係しません。

場面 基準 申告先
日本から出国・日本へ入国 現金、小切手、約束手形、有価証券の合計が100万円相当額を超える場合 税関へ「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」
米国へ入国・米国から出国 合計が1万ドル(相当額)を超える場合 CBPへFinCEN Form 105
EUへ入国・EUから出国 現金が1万ユーロ以上の場合(グループでも基準は各人ごと) 入出国する地点の税関

日本は「超える」、EUは「以上」と書き方が違うため、基準ぎりぎりの金額は避けるか、渡航前に税関へ確認してください。グループでまとめて持つ場合、日本の税関は、持つ人が申告義務者になる(各人の持ち分が容易に分かる場合は各人のものとして扱う)と案内しています。書面による申告をしないと、関税法第111条により、5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金が科されることがあります(2026年10月時点・税関公式)。出国時は、航空会社に預ける前に出発ロビー内などの税関事務室で、機内持込みなら出国審査場の前の税関出国カウンターで申告します。日本・米国・EU以外の基準は確認していないため、渡航先の公式で確認してください。

この記事が向かない人

  • 「結局いくらが正解か」を一つの数字で知りたい人。公式は金額を示しておらず、この記事の計算例は仮定の支出に基づいています
  • タイ・台湾・韓国・シンガポールなど、公式の現金比率の統計を確認できていない国に行く人。型を選べないため、初日は少額で様子を見てください
  • 日本・米国・EU以外の国へ高額の現金を持ち込む人

渡航先ごとの準備はこちら

よくある不安

海外旅行の現金は、結局いくら持てばいいですか?

一つの金額は示せませんが、「現金でしか払えない場面の支出+チップ+予備」を足して決められます。現金の比率が低い行き先(例: 米国は決済の件数の14%が現金、ユーロ圏でもオランダは店頭決済の22%)では、チップと予備が中心になります。現金の比率が高い行き先(ユーロ圏平均は店頭決済の52%)では、現金で払う予定の場面が増えます。ただし統計は目安で、自分が現金で払う場面を書き出して積み上げます。本文の計算例の単価・回数は仮定で、実額ではありません(2026年10月時点)。

現金とカードの割合は、国によってそんなに違うのですか?

違います。欧州中央銀行(ECB)の2024年の調査では、ユーロ圏の店頭決済で現金が使われた割合は、オランダの22%、フィンランドの27%から、スロベニアの64%、マルタの67%まででした。米国の連邦準備制度の調査では、2025年の決済のうち現金は14%(月平均6回)でした。いずれも現地の住民の支払い行動の調査で、旅行者がカードで払えるかどうかを示すものではありません(2026年10月時点)。

現金は多めに持ったほうが安心ですか?

外務省は「多額の現金、貴重品は持ち歩かないこと」と案内しており、イタリアのページでは現金の携行を最小限にして分散するよう案内しています。多く持つほど盗難・紛失の被害額が大きくなるため、上の計算で出した額を一度に持ち歩かず、宿泊先と分けて持つことをおすすめします(2026年10月時点・外務省公式)。

現金が100万円を超えると申告が必要と聞きました。普通の旅行でも関係ありますか?

日本の税関は、現金や小切手などの合計が100万円相当額を超える場合に申告が必要としています。米国は1万ドル超、EUは1万ユーロ以上が基準です。通常の旅行で持つ現金は基準よりずっと少ないため、ほとんどの人には関係しません。家族やグループでまとめて持つ場合だけ、基準を超えないか確認してください(2026年10月時点・税関、CBP、欧州委員会の公式)。

現金を減らす旅行の備え — 海外の通信(広告)

ここから先は、現金の額の計算とは別の話です。現金を少なくして、決済アプリや地図を使う前提の旅行では、現地でデータ通信がつながることが前提になります。今の準備で足りている方は、この節は読み飛ばしてかまいません。海外でスマホを使う手段のひとつとして、海外eSIMのサービスを例に挙げます。

広告

海外eSIMサービスの例として、トリファ(trifa)の公式サイトでプランと料金を確認できます。

国内利用者数No.1【トリファ(trifa)】

広告

海外eSIMサービスの例として、Sailyの公式サイトでプランと料金を確認できます。

海外旅行のためのお得なeSIM【Saily】

まとめ

海外旅行の現金は、「現金でしか払えない場面の支出+チップ+予備」で決めます。現金の比率が低い国(米国・オランダ型)ではチップと予備が中心、現金の比率が高い国(ユーロ圏の平均など)では現金で払う予定の場面を増やして積み、チップ文化の国では公式の目安でチップの現金を足します。計算例では、同じ4日間でも現金で払う予定の場面の多さで現金額が2倍以上違いました。多額の現金は持ち歩かず、分けて持ってください。申告制度(100万円超など)は、通常の旅行ではほとんど関係しません。チップの数字は海外のチップ、何%渡す?、出発前の手続きの期限は年末年始の海外旅行、パスポート・ESTA・K-ETAはいつまでに?で整理しています。