「ガスも電気のように乗り換えられると聞いたけれど、自分の家でもできるのか」「工事はいるのか」「替えたあとにガス漏れがあったら誰に連絡するのか」。ガスの乗り換えは、使っているガスの種類で話が大きく変わります。
この記事は、料金の安さを比べる記事ではありません。公的機関が公表している資料をもとに、都市ガスの乗り換えの仕組みと手順、乗り換えられない(または替えにくい)ケースを整理しました。特定の会社の料金ランキングはしていません。
この記事の要点
- ガス会社を選べるのは、都市ガス(導管でガスが届く地域)が中心です。2017年4月に都市ガスの小売が全面自由化されました(資源エネルギー庁)
- 都市ガス事業者どうしの切り替えは、同Q&Aによると、ガスメーターやガス器具の取替えは不要で、ガス栓の開閉栓もしないため供給は止まりません(2026年10月時点)
- LPガス(プロパン)は別の法律(液石法)の対象です。LPガス販売会社の変更と、LPガスから都市ガスへの転換は別の話で、賃貸集合住宅では入居後に事業者を変えにくい実態があると経済産業省が示しています
確認日は2026年10月です。電力・ガス取引監視等委員会のQ&Aは2017年4月の自由化に向けて作成された資料のため、期間や手順の細部は現在の運用と異なる可能性があります。申込みの前に、切り替え先の事業者の案内を確認してください。
都市ガスの小売は2017年4月に自由化された
資源エネルギー庁の解説によると、2016年4月の電力の小売全面自由化につづいて、2017年4月に都市ガスの小売全面自由化が実施されました。それまでは、地域ごとに許可を受けた一般ガス事業者が家庭などへのガス供給を地域で独占していました。自由化後は、国の登録を受けた事業者であれば、ガスの小売事業に参入できます。
自由化の前後で変わらないのは、ガスを運ぶ導管です。導管部門は「一般ガス導管事業者」として、地域独占や料金規制が引き続き維持されています(同解説)。ガス小売事業者が変わっても、家に届くガスは同じ導管から来ます。
あわせて押さえておきたいのは、ガスの導管は国土の一部にしか敷設されていないことです。同解説では、導管は都市部を中心に国土面積の6%弱にしか敷設されておらず、全国どこでも都市ガスが利用できるわけではないとされています。自分の家が都市ガスの地域かどうかが、最初の分かれ道です。
まず確認する:今のガスは都市ガスか、LPガスか
同じ「ガス」でも、供給の仕組みと根拠の法律が違います。電力・ガス取引監視等委員会のQ&Aは、家庭などに供給する事業を次のように整理しています。
| 種類 | 届け方 | 根拠の法律 |
|---|---|---|
| 都市ガス(一般ガス導管による供給) | 導管でガスを供給 | ガス事業法 |
| 簡易ガス事業(旧簡易ガス事業者) | 簡易なガス発生設備でつくったガスを、70戸以上の需要に導管で供給(主にLPガスが原料) | ガス事業法 |
| LPガス販売事業 | ボンベ(シリンダー)等で配送・供給。戸建てや69戸以下の集合住宅など | 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(液石法) |
自分の家がどれかは、検針票の事業者名、ガスメーターの表示、管理会社への確認などで分かります。都市ガスでなければ、この記事の手順はそのまま当てはまりません。
乗り換え先の事業者が「登録ガス小売事業者」か確認する
都市ガスの小売を営むには、ガス事業法に基づく国の登録が必要です。Q&Aでは、乗り換え先の事業者がガス事業法に基づく登録を受けているかを最初に確認するよう案内しています。登録を受けた事業者は、資源エネルギー庁のホームページ(「登録ガス小売事業者」)で公表されています。近畿経済産業局のガス小売事業の登録ページ(最終更新は令和8年1月23日)にも、全国の一覧は資源エネルギー庁のページを見るよう案内があります。
この記事の作成時には、資源エネルギー庁の一覧ページ自体を機械的に取得できなかったため、掲載されている事業者の数や名前はここには書いていません。実際に申し込む前に、公式ページで事業者名を確認してください。
注意点が2つあります。
- 2017年3月までに一般ガス事業・簡易ガス事業の許可を受けていた事業者は、登録を受けたものとみなされます(みなしガス小売事業者)。
- 自ら登録を受けていない会社が、登録を受けた事業者の代理・媒介・取次ぎとして勧誘することもあります。誰と契約するのかを、勧誘の相手に確認してください(同Q&A)。
Q&Aは、登録を受けているガス小売事業者またはみなしガス小売事業者との契約を検討するよう勧めています。勧誘を受けても、その場では申し込まず、登録の有無を調べてから判断します。
都市ガス会社を切り替える手順と、工事・立会い
都市ガス会社どうしの切り替えは、新しい契約先に申し込む形が基本です。実際の申込み方法や、現在の契約先への解約連絡を誰が行うかは事業者ごとに違うため、申込み先の案内で確認してください。ここでは公的資料にある共通部分に絞ります。
| 確認したいこと | 公式の説明(電力・ガス取引監視等委員会Q&A) |
|---|---|
| ガスメーターの取替え | 都市ガス事業者どうしの切り替えでは、その都度の取替えは不要。維持管理は原則として一般ガス導管事業者が行う |
| ガス器具(コンロ・給湯器など)の取替え | 都市ガス事業者からの切り替えでは不要 |
| ガスの供給停止 | ガス栓の開閉栓は行わないので、供給が止まることはない。ただしガス器具の増設や引込み管の位置を変える工事が伴う場合は、その間に止まることがある |
| 切り替えの時期 | スイッチングシステムがある大手4社(東京ガス・大阪ガス・東邦ガス・西部ガス)の管内の事業者間では、原則としてスイッチング申込みから5営業日以降の定例検針日。それ以外は切り替え先に確認 |
| 現在の契約の解約金 | 従来の選択約款や、自由化後に結んだプランでは、解約金が発生する場合がある。契約前に確認 |
| 使用量の情報 | 料金比較に必要な使用量は、現在契約中の事業者に確認する |
立会いが必要かどうかは、Q&Aに記載がありませんでした。開閉栓をしないという説明はありますが、そこから「立会いは不要」と読むことはしません。切り替え先の申込みページや問い合わせ窓口で、当日の作業の有無を確認してください。
なお、Q&Aの時期の説明は2017年当時のもので、現在の運用の細部とは異なる可能性があります。
乗り換えにくい・できないケース
最初に、3つの場面を分けます。「都市ガス会社どうしの切り替え」は前の節のとおりです。「LPガス販売会社の変更」と「LPガスから都市ガスへの転換」は、別の話です。
LPガス(プロパン)を使っている家
LPガスは、都市ガスとは別の法律(液石法)の対象です。ガス会社を比べて乗り換える、という都市ガスの話は、そのままは当てはまりません。
LPガス販売会社の変更については、経済産業省の中部経済産業局のLPガス取引適正化のページで、消費者は自由な意思によって事業者を選択できるとされています。一律に変えられないわけではありません。ただし同ページによると、販売事業者が契約時に交付する書面には、設備(ボンベ・ガス配管・コンロ等)の所有関係、設置・撤去の費用負担、契約解除時に消費者が配管を買い取る場合の金額などが記載されます。変更を考えるときは、この書面と現在の契約内容を確認してください。この記事では、変更の手順や費用の目安までは確認できていません。電力・ガス取引監視等委員会のQ&Aにも、LPガス販売事業者との契約では契約の内容によって設備代金の精算が発生する場合があるため、現在の販売事業者に問い合わせるか契約内容を確認するよう書かれています。
LPガスから都市ガスへの転換ができるのは、その地域に都市ガスの導管がある場合です。Q&Aでは、戸建ての持ち家でも、都市ガス用の配管が必要になることがあるほか、ガス器具(ガスコンロ、給湯器など)の調整や買替えが必要で、費用負担が発生する場合があると説明されています。オール電化から都市ガスにする場合も同じです。
賃貸住宅
- すでに都市ガスを使っている賃貸であれば、基本的に事業者を替えられるとされています。ただし借上げ寮で会社契約の場合など、他人名義の契約になっているときは、その契約者に確認します
- LPガスやオール電化の賃貸で都市ガスにするには、配管やガス器具の工事が要るため、原則として賃貸人や管理会社の同意が必要です(同Q&A)
- 賃貸のマンションなど集合住宅で、旧簡易ガス事業者からコミュニティー単位でガスの供給を受けている場合は、コミュニティー単位での意思決定が必要になるため、賃貸人や管理会社に確認します(同Q&A)
賃貸集合住宅のLPガス:入居後は事実上変えにくい
この「変えにくい」は賃貸集合住宅についての経済産業省の説明で、戸建ての持ち家のLPガスにそのまま当てはまるとは書かれていません。なお、持ち家でも分譲マンションなど集合住宅でLPガスや旧簡易ガスの供給を受けている場合は、配管工事を伴うため、コミュニティー単位での意思決定が必要になり、管理組合への確認が要ります(Q&A)。
経済産業省は2024年4月2日に、液石法の施行規則を改正する省令を公布しました。その中で、賃貸集合住宅では入居後は事実上LPガス事業者を変更できないといった実態があると述べています。こうした実態を踏まえ、入居前にLPガス料金などの情報を得られるようにする措置が入りました(2024年7月2日施行)。
- LPガス事業者は、入居希望者へのLPガス料金の事前提示に努めること(努力義務)
- 入居希望者からLPガス事業者に直接情報提供の要請があった場合は、応じること(義務)
- 消費者の事業者選択を妨げるおそれのある、事業者の切り替えを制限する条件付き契約の締結などの禁止(新規・既存契約とも対象)
(いずれも経済産業省の2024年4月2日の発表による。2026年10月時点で、この発表の内容が更新されているかは確認できていません。)
賃貸でLPガスの家に住むことが決まっている(または住んでいる)場合は、自分で事業者を選ぶのではなく、入居前にガス料金を管理会社などに確認するのが現実的です。
乗り換えても、保安は引き続き導管事業者が担う
「ガス会社を替えると、ガス漏れの連絡先も変わるのか」という点は、Q&Aで次のように整理されています。
- 消費者の内管(建物内のガス管)を含むガス工作物の保安と、ガス事故などの際に現場に出動して被害の拡大を防ぐ緊急時対応は、一般ガス導管事業者が担う
- ガスコンロや給湯器などの消費機器の調査や、危険発生防止の周知は、ガス小売事業者が担う
- 検針は、切り替え後も引き続き一般ガス導管事業者が行い、そのデータが切替先の小売事業者に提供される
- ガスの定期保安点検は、自由化後も引き続き行われる
つまり、「保安はすべて導管事業者が担う」わけではありません。消費機器の調査の担い手は小売事業者です。ガス漏れのにおいがするときなどの具体的な連絡先は、検針票やガスメーターの表示にある窓口、切り替え先の案内を確認してください。
乗り換えを考える前の確認リスト
- 今のガスは都市ガスか、LPガスか(検針票・ガスメーターの表示・管理会社)
- 契約者の名義は自分か(借上げ寮・会社契約などは契約者に確認)
- 乗り換え先は登録ガス小売事業者か(資源エネルギー庁の登録ガス小売事業者の一覧)。登録されていても、自宅の住所が供給対象地域か、一般家庭向けに販売しているかは別なので、一覧の供給予定地域・一般家庭への販売予定の情報や、事業者への問い合わせで確認する(Q&A問11は、供給地域は事業者ごとに異なると説明)
- 現在の契約の解約金・最低契約期間(現在の契約先に確認)
- 切り替えの時期、当日の作業と立会いの要否(切り替え先に確認)
- 賃貸・集合住宅で工事が絡むなら、貸主・管理会社・管理組合の同意
乗り換えが向かないのは、LPガスで賃貸集合住宅に住む人、自宅の住所が乗り換え先の供給地域かどうか分からない人、ガスをほとんど使わない人、解約金や最低契約期間の条件が分からない人です。ガスをほとんど使わない世帯では、乗り換えで動く金額も小さくなる傾向があります。電気とガスをまとめるかどうかは別の論点で、電気とガスをまとめるデメリット — セット割より単体で選ぶほうが安いケースで整理しています。引越しにあわせた手続きの全体は引越しの電気・ガス手続きガイドを参照してください。
冬のガス代が気になる人は、暖房器具の使い方が先に効くことがあります。ガスファンヒーターのガス代は1時間いくら?に、公式の使用量の目安から出す試算があります。
よくある疑問
ガス会社は誰でも乗り換えられますか?
現に都市ガスの供給を受けている家であれば、賃貸住宅を含めて基本的に可能とされています(電力・ガス取引監視等委員会の消費者向けQ&A)。ただし借上げ寮で会社契約の場合など、他人名義の契約になっているときは、その契約者への確認が必要です。LPガス(プロパン)を使っている家は都市ガス会社の乗り換えとは別の話です。LPガス販売会社の変更は設備の所有関係や契約内容の確認が要り、都市ガスへの転換は配管や器具の工事が絡みます。賃貸集合住宅では入居後に事業者を変えにくい実態があると経済産業省が示しています(2026年10月時点)。
乗り換えで工事やガスの供給停止はありますか?
都市ガス事業者どうしの切り替えだけなら、同Q&Aによるとガスメーターの取替えやガス器具の取替えは必要なく、ガス栓の開閉栓も行わないため供給が止まることはありません。一方、LPガスやオール電化から都市ガスに切り替える場合は、ガスメーターの設置や都市ガス用の配管、ガス器具の調整・取替えが必要になる場合があり、その間は供給を止めることがあります。立会いが必要かどうかは同Q&Aに記載がないため、申込先で確認してください(2026年10月時点)。
ガス会社を替えると、ガス漏れなどの安全面はどうなりますか?
同Q&Aでは、消費者の内管を含むガス工作物の保安や、事故時に現場へ出動する緊急時対応は一般ガス導管事業者が担うと説明されています。ガスコンロや給湯器など消費機器の調査や危険発生防止の周知は、ガス小売事業者が担います。ガスメーターの検針も、切り替え後は引き続き一般ガス導管事業者が行います(2026年10月時点)。
電気の契約も見直すなら
ここまでのガスの手続きとは別の話です。電気の契約を今のままで困っていない人は、この節を読み飛ばして構いません。電力会社を比較してみたい場合は、複数社の料金プランを確認するのも一つの方法です。
まとめ
ガス会社を乗り換えられるのは、都市ガスを使っている家が中心です。2017年4月の都市ガス小売全面自由化で、国の登録を受けた事業者であれば小売に参入できるようになり、登録の有無は資源エネルギー庁の一覧で確認できます。
都市ガス事業者どうしの切り替えは、電力・ガス取引監視等委員会のQ&Aによると、ガスメーターやガス器具の取替えがなく、供給も止まりません。立会いの要否はQ&Aに記載がなく、申込先での確認が必要です。保安のうち内管の保安と緊急時対応は導管事業者、消費機器の調査は小売事業者が担います。LPガスは別の制度で、賃貸集合住宅では入居後に事業者を変えにくい実態があります。
LPガスから都市ガスにするときは、配管や器具の工事が絡むため、貸主や管理会社、管理組合の同意も含めて確認してください。電力会社の切り替えの仕組みは、電力会社の切り替え方法とデメリットで整理しています。
本記事は公開情報に基づく解説であり、最新の手順や条件は、各事業者と官公庁の公式ページでご確認ください。




